社会人のおさむさん(仮名)は友人とバンドを組んでいてボーカルをされている方でした。日中はお仕事に励んで休日には歌のレッスンを受けたりリハーサルをしているそう。
そんなおさむさんがレッスンに来てくださったときのことです。
おさむさんは、こんな悩みや望みを持っていました。
・歌の先生に「口を大きく開け」と言われる
・おさむさんにとって、口を大きく開けると歌いづらくなってしまう
・歌の先生は取り合ってくれないので歌うことが楽しくなくなってきた
こんにちは、トクガワです。今日はよろしくお願いします。
レッスンに来てくださってありがとうございます。もしよかったら、おさむさんが今日来てくださったきっかけを教えていただけないでしょうか?どんなことに興味があるとか、こんなことに困っているとか、どんなことでも構いませんよ。
昔から音楽が好きで、社会人になった今も友人とバンドを組んで活動していて、ボーカルをやっています。もっと楽しく歌いたいと思って、歌のレッスンに行ったりもしているのですが、レッスンで困っていることがありまして…
もっと楽しく歌いたいと思って通われているレッスンで困っていることがあるんですね。
そうなんです。歌の先生には「もっと口を大きく開けて歌いなさい」と言われるんですが…私にはそれはとても辛いんです。自分では開けてるつもりなんですが、先生は「もっと口あけて」と言われてしまうんです。でも言われたとおりに口を開くととても歌いづらいんですね。
そうなんですね。先生の言うとおりに口を大きく開けて歌うと、おさむさんとしては歌いづらいんすね。そのことは先生には伝えましたか?
先生はおさむさんの訴えになんとおっしゃいましたか?
「歌いづらいかもしれないけど、そのくらい口を大きく開かないといい歌声は出ない」と言われました。
先生はそんなことをおっしゃったんですね。おさむさんとしてはそのことについてどう思われましたか?
私としてはもっと楽しく歌いたいんです。なので歌のレッスンに行くのが楽しくなくなってきてしまったんです。
はい、いろいろ調べているとトクガワさんのサイトを見つけたんです。読んでると私がこれまで習ってきたことや歌の先生が言っていることと全く違うことをトクガワさんが発信しているので、どんなレッスンか興味があって。
ありがとうございます。確かにそうですね。私自身、ナレーターとしていろいろ学んできましたがそのときに学んだこととは全く違うことばかりブログにまとめていますね。
なので、トクガワさんのレッスンに来れば今の状況を改善できるきっかけが見つかりそうな気がして…
ありがとうございます。おさむさんの期待に応えられるように精一杯努めさせていただきますね。
こちらこそよろしくお願いします。
では早速、おさむさんが普段どのようにして歌っているか見せていただきたいのですが、歌っていただいてもいいでしょか?
♪じぶんの~こころを~かぜにきけ~ おさえきれな~い ちの~たぎり~♪
ありがとうございます。ワンフレーズだけ歌ってもらいましたけれども、今歌ってみた感想としてはおさむさんはどうでしたか?
そうですね。特に変わったこともなく、いつもと同じような感じではあります。
もし良かったら、歌の先生に習っているときのように歌ってみてもらえませんか?嫌なら断ってもらって構わないので。
わかりました。それをなんとかしたくてトクガワさんのレッスンに来たので、一度やってみます。
♪じぶんの~こころを~かぜにきけ~ おさえきれな~い ちの~たぎり~♪
さっき歌っていただいたようないつもの歌い方と比べると、歌いづらくなるわけですね?
はい、声が持たないというか、息が出しづらいような気もします。
さっきと比べて、いつも歌っている時と歌の先生に習っているときとでは、おさむさんが変えたことってありますか?
そうですね、口をもっと大きく開くように言われているので、それをやりながら歌っているつもりではあるのですが・・・
たしかに、私もおさむさんが歌っている姿を見ていて一生懸命に口を開こうとしているのが伝わってきました。
でも歌の先生はもっと開くように言うんですよね・・・
そうですか。ところで、口を大きく開くために、先生はどんな風におさむさんにアドバイスをくれたりしていますか?
うーん・・・、ただ「口を開け」とだけしか言わないですね。
それは困りましたね。おさむさんはどうすれば口が大きく開くかご存じですか?
「どうすれば」ですか?
口を開けばいいと思いますけど・・・
そうですよね。みなさんそう仰います。おさむさんの先生も同じことを思っているかも知れません。ところが、私たちのカラダでは、口を開くためには何かが起こらないといけません。
はい、そうです。例えば、毎日やっているシンプルなことを考えてみましょう。「歩く」ことについて考えてみると、おさむさんは歩くことはできますよね?
はい、そうです。きっとこれまでおさむさんは意識したことがないかも知れませんが、でもゼッタイにやっていることがあります。
はい、その通りです。バカバカしい回答かも知れませんが、左右の脚が交互に前に出ることで歩くという動きを実現しています。
それと同じことで、私たちのカラダは何らかの動作をするためには、カラダのどこかを動かす必要があります。
では今の要領で「口を開く」ことについて考えてみましょうか。口を開くためにはおさむさんのどこがどう動けば良いでしょうか?
うーん・・・、口を開くためにはどこが動けば・・・
あ!歯が動けばいいじゃないですか?
なるほど、歯がどういう風に動けばいいと思いますか?
そうですね。そうすれば確かに口は開きますね。
動きについてもう少し詳細に取り上げてみたいのですが、上の歯と下の歯が離れるためには、どこがどう動けばいいですか?
そうですね。顎が動くことで口を開くことができるわけですね。
さて、この時、上顎と下顎の両方が動く必要があると思いますか?
上顎も下顎も動けばより大きく口を開くことができると思います。
なるほど・・・確かに大きく口を開くという意味ではその方法もあるかと思いますが、もし上顎も下顎も動かすことで、私たちの発声を邪魔しているとしたら、おさむさんはどう思いますか?
発声の邪魔ですか?もし歌いづらくなるならそれはやりたくないですね。
そうですよね。実は、上顎と下顎を動かして口を開くという動きは、実は私たちのカラダの構造に反しているんです。
そうです。上顎を動かすというのは実は不可能なんですね。
えっ?こんな風にすればできませんか?(おさむさん、口を大きく開いてみせる)
そうなりますよね。でもそれは上顎ではなくてアタマを動かしているんです。
引用:『プロメテウス解剖学 コア アトラス 第2版』
図38.6 顎関節
A 左外側方から見たところ
これは顎の関節の図です。いわゆる下顎というのは下顎骨という骨のことで、耳の穴の少し前あたりに関節があって、ここから動くことができます。
でも上顎の骨というのは実は頭蓋骨を構成する骨のうちの1つなんです。だから上顎だけを動かすというのは不可能なんですね。それをやろうとしてしまうと、アタマ全体を後ろに引っ張らなくてはなりません。
(おさむさん、口を大きく開きながら)これってアタマを動かしていたんですか?
はい、そうです。さっきおさむさんに歌ってもらった時も、そんな口の開き方をしていましたよ。
それは仕方ありませんよ。何度も何度も歌の先生に言われているので、なんとかして口を大きく開こうとしていたからそうなってしまったんでしょう。
先日ブログにもアップしたんですが、私たちのカラダではアタマと脊椎の動きは非常に重要で、それがカラダ全体の動きや人間の機能の質に影響を与えたりします。
カラダの構造に反した使い方は、機能を邪魔してしまうんですね。
だから上顎を動かすということはアタマを動かすことになって、それが発声の邪魔をしてしまうわけですか?
はい、その通りです。だからおさむさんが口を大きく開こうとすると歌いづらくなるということが起きてしまうんです。
だったら歌の先生が口を開くように言うのはどうしてでしょうか?
そうですね・・・私はその先生がどんなことを意図してそういっているのかわからないのでその質問には答えられないのですが、私の考えではわざわざそんなことをしなくてもいいと思います。
はい。おさむさんは「もっと楽しく歌いたい」と望んでいるわけですよね?
おさむさんが望んでいることは歌の先生が指摘することによって邪魔されているからです。
1つ私から提案があるのですが、お話してもいいですか?
もう一度同じフレーズを歌ってみてもらいたいのですが、今度は口を大きく開くと言うことを忘れてください。
いつも通りに歌っていただいて構わないんですが、これから私がお伝えすることをやりながら歌ってみて欲しいんです。
やって欲しいことは、さっき見た図を思い出して欲しいのです。
下あごの骨は耳の穴のほんの少し前にくっついていて、それが下方向に動きます。下あごの骨をもっと自由に動かしてみてください。
あ、それだとアタマも一緒に動いています。
ここから下あごの骨がだけを動かすこともできるんです。(トクガワ、おさむさんの顎関節をガイドする)
あ・・・こういうことですか?さっきよりも口が開きやすい気がします。
いいですね。ではそうやって口を開くことができると考えながらもう一度歌ってみてもらえませんか?
わかりました・・・
♪じぶんの~こころを~かぜにきけ~ おさえきれな~い ちの~たぎり~♪
はい、ありがとうございます。さっきと比べて違いがありましたか?
ありました!さっき歌ったときよりも歌いやすいのと、声が出しやすくてこっちの方が断然いいです。
たったこれだけのことなのに、こんな変化が起きるんですね。
そうですね。今までのおさむさんは口を開くときにアタマも一緒に動かしてしまっていましたが、その頭の動きが結果として発声の邪魔をすることに繋がっていたんですね。
顎の動きだけを明確にしてあげることで、発声を邪魔する動きが起こらないようになったんですね。
カラダの使い方を変えるだけで、声は変わるということですね。
はい、その通りです。そして声が変わるのはあくまで通過点で、その先にはおさむさんが望んでいることに繋がっていきます。
これを活用できるようになれば、もっと声が出しやすくなるし、もっと楽しく歌えるはずですね。
そのためには繰り返しやって、それをカラダに覚えさせる必要がありますよね?
はい、その通りです。残念ですが、私たち新しく手に入れた情報や知識はすぐ忘れてしまうので、覚えるまで何度も反復して、記憶に定着させる必要があります。
その後、おさむさんは何度も同じフレーズを歌いながら、口を開くと同時にアタマを動かしていた習慣に気付きました。
そして、それが起きたときと起きなかったときでは、起きなかったときの方が歌いやすいと言うことに気づきました。
今回のレッスンについての解説はこちら
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