こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
最近、発声についての情報を調べている方がこの『声のトリセツ』を読んでくださっているようで、LINEでの質問や相談も多くいただくようになってきました。
相談をくださる方の状況も実にさまざまです。
社会人で営業のお仕事をされている方、趣味で歌や表現をされている方、吃音に悩む方、人付き合いが苦手な方など「声」がご自身の生活や人生において大きく影響する方もいれば、10代の方でこれから声の仕事や表現の仕事に就きたい方、歌手になりたい方、カラオケがうまくなりたい方のように若くて希望に満ちあふれた方も多いです。
そんなときある質問をいただきました。
インターネットでボイトレや発声の勉強をしているのですが、「声を前に出す」という感覚がよく分かりません。
私はすぐにこうお返事しました。
わざわざ「声を前に出す」何てことをしなくても、声は前に出て行くので今すぐ余計なことはやめましょう。
その方からどんなお返事が来るか楽しみにしていたのですが、残念ながらお返事はありませんでした。
本当に残念です。。。
彼はこれからクソの役にも立たない「声を前に出す」と言うことを一生懸命練習して、自分で自分の発声を邪魔していくことでしょう。
まだネットで知った情報を確かめずに信じてるの?
彼が返事をくれなかった理由を私なりに考えてみました。
彼には「こんな声を出したい」という望みがあったはずなんです。そのためにインターネットでボイトレや発声に関する情報を仕入れていました。そこで手に入れた「声を前に出す」という方法を信用して、それをやろうとしたけれども、上手く行かなかった。そこで私に相談してくれました。
しかし、相談した相手(トクガワ)からは「それは余計なことなのでやめましょう」と言われてしまった。
自分が信じていることについて「それは不要だ」という想定外のことを言われてしまったために、「この人は役に立たない人」とか「自分が信じていることと正反対のことを言う人」として私のことを認識したことでしょう。
でもそれでいいんです。
何を信じるか、どの方法を採用するかは自由なんです。彼が自分で決めるべきことなんです。
でもね、残念なことに彼は役に立たない情報を信じてしまいました。
「声を前に出す」という全く役に立たない情報を信じてしまったんです。クソの役にも立たないどころか、発声の邪魔をしてしまうことなんですけど、彼はなぜそれを信じてしまったのか?
理由はカンタン。
「声を前に出す」ということをするとカラダで何が起きているかを知らないからでしょう。
いいかげんネットで知った情報を確かめずに信じるの、やめにしませんか?
そんなことをしているからいつまで経っても「理想の発声」ができずに悩んでることに気づきましょうよ。
お互いの足の引っ張り合い、やめたら?
当然ですが私がお伝えする情報が唯一の正解ではありませんし、役に立つとも限りません。
実際にあなたが試した上で「トクガワの言ってること、役に立つやん!」と思っていただけたなら、採用してくれればいいんです。そしてその情報をいつ使うかもあなた次第です。
使いたいときに使えばいいんです。
世の中にはさまざまな情報が溢れています。その中から、あなたの役に立つ情報だけを取り入れて、役に立たない情報はすべて忘れてください。
もう一度言います。
あなたにとって役に立つ情報だけを取り入れてください。
役立つかどうかを確かめるために、まずは試してみてください。
ただインターネットで聞きかじった情報を試しもせずに、真に受けたり信用しないでください。
実際のその情報を使ってみて、もしあなたの「こんな声になりたい」という望みに役立つものだったなら、その方法を取り入れてください。それとは逆に役に立たないようだったら遠慮なく切り捨ててください。
キャリアがある人、経験がある人、実績がある人が言っていることがすべて正解とは限りません。平気で間違ったことを言う人もいます。(本人は気づいていないけど)
当然、あなたに役に立たなかった情報が他の人には役に立つということもあり得ます。だからあなたの役に立たなかった情報をコテンパンにディスるのもやめましょう。他の人には役に立たなかった情報でも、あなたには役に立つということもあるわけです。
そんなとき、他の人がそれをディスっていたとしたらあなたは試すことすらしないでしょう。ということはね、お互いの可能性を潰し合っているわけです。こんなバカみたいなことをいつまでやっているんでしょうね。
そんなことをしてお互いの足を引っ張り合っているから、いつまで経ってもあなたは「理想の発声」ができないんです。
と言いながら、私は「声を前に出す、なんてのは無駄な努力」とディスってますけどね(笑)
では、なぜ私が「声を前に出す、なんてのは無駄な努力」と主張するのか、その理由を説明します。
一言で表現すると「カラダのデザインがそうなっているので、わざわざそんなことをしなくても声は前に出ていく」からです。
そもそも「声は前にしか出て行かない」
そもそも、私たちの声は前にしか出て行きません。だって、私たちのカラダのデザインがそうなっているんですから。
声は空気の振動ですよね?つまり肺から出てきた空気が音を生んで、それが相手に伝わるわけです。
その知識を前提に、私たちのカラダの構造を見てみてくださいよ。
簡単な図ですけど、私たちのカラダはこんな風になっています。
こんな風になっているので肺から押し出された空気の通り道が前方向にしかないわけです。私たちのカラダの後方に向かって空気が出ていく穴はないわけです。
つまり、声は前にしか出て行かないわけです。
先ほどの図に空気の流れを図示してみました。
大まかな解説ですが、まず肺から送り出された息は気道を通って上に向かいます(①)。
そして、声帯ヒダの開閉によって空気と声帯ヒダがぶつかり、音が生まれます(②)。
そのまま上に向かうと口蓋垂や軟口蓋という所にぶつかります(③)。ここで空気の流れの向きが変わるのです。
肺から上に向かって送り出されてきた息の流れは、ここで歯や口がある方向に変えられます。つまり前側に向かって送り出されることになります(④)。
あなたがただ息を送り出しさえすれば、息はアナタの前に出るのです。そんな風に私たちのカラダはデザインされています。どんなに努力してもアタマの上に向かって声を出したり、後ろに向かって声を出すことは不可能なのです。
ちなみに、自分の後ろ側の人に話しかける、というは自分の前側に発した声が空気の振動を伝って後にいる人の耳に届くという現象なので、後ろに向かって声を出していることではありませんからね。もはや物理の領域です。
結局の所、「声を前に出す」ということをしなくても、あなたのカラダは、声が前に出るような構造を生まれながらにして持っているのです。
だからわざわざ「声を前に出す」ための努力なんて全く不要なのです。
にもかかわらず、「声を前に出そう」とすると、カラダでは全く逆のことが起こるんです。
声を前に出すと、実は前に出なくなる
前に私のレッスンに来てくださった男性のエピソードをご紹介しますね。
ある業界の営業職をされているおさむさん(仮名)がレッスンに来てくださいました。彼の会社では、自社の製品を広めていくために自社主催のセミナーをする機会が多いそうです。これまでは先輩のサポートとして一緒にセミナーを運営していたのですが、その業務を先輩からバトンタッチされたそうです。
おさむさんは、こんな悩みや望みを持っていました。
・先輩に「もっと声を前に出せ」と注意される
・声を前に出すと、だんだん声が出しづらくなる
・それでも続けていると、声が枯れてプレゼンをするのが辛くなる
レッスンを通じて、おさむさんはどんな体験をしたのでしょうか?
後日、おさむさんから連絡をいただいたのですが、プレゼンは大成功で参加者の方からも好評だったそうです。
レッスンではおさむさんがご自身で必要なときに活用できるアイディアをお渡ししましたが、プレゼン本番では活用してくださったから成功を収められたと信じています。
とはいえ、私はアイディアをお渡ししただけで、実際に行動を起こしたのはおさむさんなんですけどね。
自分で発声の邪魔をしているのに、まだ気づいてないの?
おさむさんとのレッスンのエピソードを紹介しましたけれども、あなたはどう感じましたか?
多くの人が発声の指導において「声を前に出す」という指示をされていることでしょう。私もずいぶん前に声優の養成所やナレーターの養成所に通っていたころ、そう教わってきました。
しかしながら、残念なことにこんなことを教えてくださる方とは出会うことはできませんでした。
・「声を前に出す」とは具体的にどういうことか?
・何をどうすれば、声は前に出るのか?
・何が起こったら「声が前に出た」と言えるのか?
これらの事を教えてくれる人に出会っていれば・・・と考えたこともありましたが、そればっかりは仕方ありません。
なので、おさむさんのように「声を前に出す」ということについて悩んでいたり困っている方にとって何かのサポートになればと思い、こうして今回のテーマを取り上げました。
おさむさんとのレッスンを振り返ってみましょう。そうすれば「声を前に出す」ことが発声の邪魔をしている、という事実を理解していただけるでしょう。
おさむさんは先輩から「声を前に出せ」というアドバイスともらい、それを実行しましたがプレゼンをしているとだんだんと声が枯れてくるようになりました。
そこで私はおさむさんに「声を前に出す」ときのカラダの使い方を見せていただきました。その時に私が観察したのは、手のひらから腕、さらに鎖骨と肩胛骨にかけて力が入っているように見えました。
この段階では、まだそれが原因かどうかはわからないので、「声を前に出す」ということをやっていないとき、つまり以前のような声の出し方でプレゼンをしてもらいました。その時は声が枯れると言うことが起きていなかったので、何かの違いがあるはずだと考えたわけです。
そしておさむさんの普段の声の出し方では、手のひらから腕、さらに鎖骨と肩胛骨にかけて力みはみられませんでした。
ということはこの力みが声が枯れる原因になっているんじゃないか?と推測したわけです。
発声というのはカラダ全体で行われている一大イベントですから、手や腕の使い方も大いに関係します。この力みが上腕、鎖骨、肩胛骨などを固定させるように働いてしまうと、肋骨の動きにも影響を与えます。肋骨は呼吸に大きく関わっているので、呼吸に影響を与えてしまうわけです。
つまりおさむさんが「声を前に出そう」とするときに生じている手のひらから腕、さらに鎖骨と肩胛骨にかけての力みが、おさむさんの発声を邪魔していると考えました。声が枯れたのは、その邪魔されている分を補おうとして発声器官の他のどこかがいつも以上に無理をする必要が生じてしまったからだと考えたのです。
そこで、私はその力みをなくすために2つの提案をしました。まず一つ目は、カラダのデザインについて。私たちのカラダはわざわざ声を前に出さなくても、前に出て行く構造をしているということを知ってもらいました。これでおさむさんに「わざわざ声を前に出す必要はない」ということを理解していただきました。
そして2つめは「息を肺から上方向に向かって出す」ことをお願いしました。「声を前に出すことをやめる」、「手をギュッとするのをやめる」という提案もありますが、私の経験上ではこれらはあまり効果はありません。事実、おさむさんは「手をギュッとするのをやめる」という案を思いつき実践してみましたが大きな効果はありませんでした。
「○○しない」とか「○○するのをやめる」という表現は否定形の表現なので、私たちにはほとんど効果がないんですね。だから「△△する」という別のことをする案を提案したわけです。
おさむさんが「息を肺から上方向に向かって出す」ことをすることで「手をギュッとする」というのは起きなくなるわけです。
他のことを意識的に実行することで、発声の邪魔をしている行動を起こさないようにするわけです。
残念ながら多くの方は自分で発声の邪魔をしていることに気づかないまま、発声練習やボイストレーニングをしています。自分で発声の邪魔をしながらそんな練習して、どうなるか想像できませんか?
ただただ、自分で自分の発声の邪魔をすることを繰り返し練習しているだけなんですよ?
自分で自分の発声を邪魔することをやめない限り、インターネットで聞きかじったボイトレ理論をどれだけ実践しようとも、あなたが望んでいる声になれるわけがないんです。
例えば、高音を出したいなら「高音を出す練習」をするのではなくて「自分で自分の発声を邪魔することをやめて、今よりも高音をスムーズに出せるようにする練習」をするべきなんです。
あなたが望んでいる結果を起こすためにはプロセスが必要です。そのプロセスのどこかに、あなた自身が邪魔しているところが必ずあります。
それに気づいていますか?
それに気づかずにその先のプロセスをただ繰り返していても、何にも変わりませんよ。
まとめ
それでは、今回のまとめです。
・だから何もしなくても声は前に出て行く
・「声を前に出そう」とすると、カラダは余計なことをし始める
・それが結果的に発声の邪魔をしてしまう。
今回のおさむさんとのレッスンエピソードを読んでいただいければお分かりの通り、「前に出そう」ということをしようとすると、その指令に従って私たちのカラダはそれなりの反応をしてくれます。「声を前に出す」ためにいろんな努力をしてくれるのです。
例えば・・・
・筋肉をより緊張させて力を込められるようにする
・前方向へ声を飛ばすため顔や首を前方向に動かす
・口や目を大きく開く
他にも色んなことがカラダで起こるでしょう。そして何が起こるかは人によって違いますからこれさえやればいいと言う方法はありません。
声を前に出すことを邪魔するカラダの使い方に気づき、それをやめるために必要な事をしなくてはなりません。
LINEで「○○したいんですけどアドバイスください」という質問をいただくこともありますけど、こればっかりは私もあなたの声を出すときのカラダの使い方を実際に見ない限りはわかりません。だから私から「声を出すときにどんなことをしていますか?」と質問しているわけです。
例えばあなたが「前方向へ声を飛ばすため顔や首を前方向に動かす」ということをしているなら、息の通り道を狭めてしまっているので、声が前に出て行くのを邪魔しています。だからそれをやめるための提案をします。
でもおさむさんのように「手と腕をギュッとしている」なら息の通り道を狭めるのをやめる提案は必要ありません。その代わりにおさむさんにお渡しした提案が必要なわけです。
すべての人に通用するボイトレ理論や練習、トレーニングなんて存在していないんです。
だからまずはあなたが自分の発声を邪魔している行動に気づく必要があるんです。
それに気づくことができれば私がLINEのコラムでお届けしているアイディアも効果的に活用できるはずです。
もしまだご自分の発声の邪魔をしている習慣に気づいていないなら、早めに気づいておいた方がいいですよ。
数年後、必ずと言っていいほどそのクセに悩まされることでしょう。そして、人前で話したり、広めの空間でちょっと話しただけですぐに疲れてしまう声のできあがりです。
営業のお仕事をしていたり、セミナー講師やプレゼンをされる機会の多い方、歌やセリフ、朗読やナレーションのような声のお仕事をしている方は特に気をつけてくださいね。
あなたの大切な商売道具を、知らないうちにあなた自身が破壊していることに等しいですから。
もしご自分ではみつけられないと言う方は気軽にLINEから質問してくださいね。
最後に一言。くどいようですけど「声を前に出そう」という無駄な努力は、今日限りでやめましょう。
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