こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
今回扱うテーマは、声のレッスンでしばしば言われる「声を開放する」ことについて。
漢字では、解き放つの「解放」と開け放つの「開放」の2通りがありますが、一体どちらのことを意味していると思いますか?
それって、一体どういうことなのでしょうか?
何をどうすればいいの???
はっきり説明できる人います???
今回は、「声を開放する」というコトバが意味することを探ると同時に、あなたの声を今よりももっと魅力的にするためには、実際に何をどうしていけばいいかについて考えていきます。
ただ闇雲に、全力で声を出すことが開放ではありませんからね。
私はこのアプローチは好きじゃない!
発声の指導をされている方の中には、「声を開放する」というレッスンをされている方もおられるでしょう。
演技指導においても「感情解放」という手法がありますよね。
私個人としては「解放する」・「開放する」というアプローチはあまり好きではありません。
具体的に何をどうすれば「解放」・「開放」できるのかわかんないし、なんか漠然とした感覚を追い求めているみたいでどうも好きになれません。
念のため言っておきますけど、そのアプローチを否定しているのではなくて、個人の好き嫌いの問題ですからね。
で、今回はその「解放」・「開放」が一体何を目指しているのかを私なりに考えてみたいなと思っております。
もちろん、それが皆さんの声のお役に立つといいなと願いつつ。
解放?開放?どっちやねん!!
「かいほう」って漢字で書くと2通りありますよね。
「声をかいほうする」ということが何を意味しているのかを知る前に、まずは「かいほう」の意味を調べておきましょう。
ちなみにここまで私は開放を使ってますけどその理由も明らかにしますね。
まずは「開放」の意味から。
「開放」- 大辞林 第三版
1.窓や戸などをあけはなつこと。 ↔ 閉鎖 「扉の-厳禁」
2.禁止したり制限したりせずに、だれでも自由に利用したり、出入りするのを許すこと。 「校庭を-する」 「門戸-」
そんで「解放」の意味。
「解放」-大辞林 第三版
からだや心の束縛や制限を取り除いて自由にすること。 「子育てから-される」 「奴隷-」 〔同音語の「開放」は制限したりせずに自由な出入りを許すこと、また、扉や窓などを開け放つことであるが、それに対して「解放」は心身の束縛を解いて自由にすることをいう〕
2パターンの「かいほう」がありますね。
さて、「声をかいほうする」においての「かいほう」とはどちらを使うべきでしょうか???
今回は「開放」を使っていきます。
以前、「あなたの声を救う3つのポイント」でも書きましたが、声が良くない原因のひとつに神経支配の悪さというものがありました。
おさらいはこちらから
この神経支配の悪さという点から見ると、「解放」では不適切なのです。
だって、とくに何かを束縛しているわけではないから。
声のトリセツで私がしばしば言っているのですが、声はアナタの全てでできています。
今のアナタができうる最大限のリソースを使って声を出しているのです。そこに何かの束縛はありません。
演技における「感情解放」は、言葉の通り社会性や思い込み、恥ずかしさなどで押さえ込んでいる束縛を解き放つ、まさに「解放」です。
しかし、「声」という観点で見ると、私は声を束縛したり制限しているものはないと考えています。声が自由に出ていくことを許してあげたいのです。
だから「声を解放する」は不適切。
「声を開放する」ということで、今回のお話をすすめて行きましょう。
「声を開放する」とは、いったい何のこと?
それでは「声を開放する」ということについて、より詳しく見ていくことにしましょう。
まだ「開放」という言葉を使うことに抵抗がある方もいるかもしれませんのでフレデリック・フースラーの『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』の一節を紹介します。
発声器官の神経支配をよくすることを、われわれが開放作業と称している。それは、神経支配の良い器官は開放されており、いわば目覚めており、無意識の状態に閉じ込められていないからである。
この一節からもわかるとおり、声の開放とは、発声器官の神経支配をよくすること、つまり目覚めさせることなのです。
以前、「私たちの発声器官はほとんどが使われていない」というような内容の記事を書きましたが覚えていますか?
発声に関わる多くの筋肉は使われないままでいます。そのため、特定の筋肉にだけが他を補うために必要以上の緊張を強いられているのです。
それをうまく協調するように働かせることが、声を開放するために必要なことなのです。
声の学びは、まず聞く事から始まる
では、発声器官を協調させるためには何をすればいいのでしょうか?
フースラーはこうも記しています。
ここでもう一度言っておきたいことは、この開放作業は、まず聞く事から始まるということである。「聴覚の神経線維と、発声器官の神経線維とのあいだは、人間の脳の中で、まったく独特の結合が行われている」(W.Wundt)
(機械的に営まれていた古くさい流派ではしかし、終わりには実際に、発声練習にさいしては聴覚は除外されなければならない、という見解に到達していた。)
非常に興味深い内容です。今でも発声やボイストレーニングにおける学び方にはいろんな流派があるでしょう。フースラーの本が書かれた時代は今よりも随分前ですが、その時点で「機械的に営まれていた古くさい流派」と指摘しているのをみると、人間の身体を機械のように扱い、この方法こそが正解であると生徒に押しつける指導方法はこの頃から存在していたのですね。
さて、フースラーが主張する「開放作業は、まず聞くことから始まる」ということについて、似たような主張をしている人がいます。
アルフレッド・トマティスというフランスの耳鼻咽喉科医です。彼はトマティスメソッドという言語学習や発声、コミュニケーションなどにおける改善メソッドを確立した人です。
以前、彼の『人間はみな語学の天才である』という本を読んだのですが、言語を習得する上でとても役に立つことが書かれていました。どのようにして我々が言語を習得するのかという理論は、外国語を習得したいと考える方にも役に立つ情報がありました。興味がある方は是非。
さて、トマティスは本書の中で学びにおいて必要なものを挙げています。
学ぶ意欲はもちろん大切だけど、次の能力が必要だとされているのです。
1. 言語を聞き、再現する能力
2. 言語を聞き、くりかえす能力
3. くりかえす(再現する)自分の声を聞き取る能力
そして、これらの能力が変化することで、声の音色や発声器官の組織、上下咽頭共鳴腔の使い方、喉頭の筋収縮、呼吸、身ぶりを変化させると主張しています。
それが反射反応によって、次第に身体の携帯や構造全体までに変化を起こすというのです。
トマティスが記したことからもわかるとおり、声の開放のためには聞く事が大切だと言うことですね。
トマティスの記したことについてはまた改めて紹介したいと思います。
あなたが「イイ声」「素敵な声」「こんな声になりたいな」と思う誰かの声があるなら、その声をたくさん聴いてみることからはじめましょう。すると、どんなことが起こるでしょうか?
筋肉の本源的運動
そして次の段階。発声における筋肉活動が協調されるようになったら、「筋肉を使う」ということにも注目してみましょう。
「筋肉を使う」という言葉を聞くと、アナタはどんなことをイメージしますか?
私は思いものを持ち上げたり、筋トレをするときののようにパワーを必要とする状況をイメージします。
こういう状況って時間をかけてパワー使い続ける様なイメージがありますよね。筋肉を緊張させた状態を維持するようなイメージです。ボディビルダーがポージングをしている姿を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。
声を出すときに、だんだんを力を込めていったり身体を固めて言ってしまう方が多いのは、そんな筋肉の使い方のイメージを持っているからかもしれません。
しかしながら、筋肉の本源的な運動は、ピクッと動くことで、筋肉の線維の上を、単一の周波数がさっと通り過ぎることです。
声を出すときに活動する筋肉も、速やかに、ためらわずに、さっと緊張するのです。
どうも筋肉を緊張させようとすると、じわじわ緊張させるような努力をしてしまいがちですが、実はほんの一瞬で行われているのです。
声を出すために仕事をしている筋肉はたくさんあります。
それらの筋肉がじわじわ緊張していくのではなくて、それらの筋肉が活動をする上で必要な緊張が一瞬で行われる、というふうに注意を払うだけで私たちのカラダはそのように活動してくれます。
「丁寧に」と「ゆっくり」は同じ意味ではありません。
「素早く丁寧に」することも可能なのです。
ちなみに、アレクサンダー・テクニークには「全て一緒に、ひとつずつ丁寧に」という言葉があります。この言葉は、この筋肉の活動を見事に言い表していますよね。アレクサンダー・テクニークについて詳しく知りたい方はしばしお待ちを。近いうちにブログでも書きますし、私のレッスンを無料で受けてくださる方を数名募集する予定なので。
声を出すことにおいて、私たちのカラダは呼吸や発声の大運動が、全て一緒にひとつずつ丁寧に行われているというように考えてみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は「声を開放する」ということをテーマに、
・開放という言葉の意味するところ
・声の開放とは何なのか?
・声を開放するにはまず聞く事から
・さらなる声の開放、協調のためには筋肉の動きを理解する
について紹介しました。
声にコンプレックスがあったり、良い声になりたい、スムーズに声を出したいという悩みから、人前で堂々と話ができるようになりたいというような望みまで、声に関する悩みや望みを持った方はたくさんいるでしょう。
そんな方に、「基礎ができていないからだよ」と機械的に発声練習をオススメする人もいるでしょう。
しかしながら、ただやみくもに大きな声を出したり、「あめんぼあかいな、あいうえお」のような発声練習をただ延々と繰り返しているだけでは、まったく磨かれない要素がたくさんあるのです。
少なくとも私はそのように考えています。
声はアナタのぜんぶでできていますからね。
もっと詳しく知りたい方はLINE@から無料相談ができるので、気軽に質問してくださいね。
私は声のトリセツを通じて、発声練習では決して鍛えられない部分を皆さんに知って頂くとともに、その分野をサポートできる環境を提供していきますね。
これからも、お楽しみに^^
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