これまでお届けしてきましたシリーズ「シアトルで学んだこと」。
今年6月のシアトル滞在時に、私が師と仰ぐキャシー・マデンさんのレッスンを通じて学んだことをナレーションに応用してきました。

残すところ、今回と次回でおしまいです。
もうしばらくお付き合いください。

今回はいよいよ(?)皆さんが気になっていることを取り上げます。

声優・ナレーターの声を使うパフォーマーの方々だけでなく
検索エンジンから「カラダトリセツ」に来てくださったプレゼンや営業、日常のコミュニケーションで声を使う方々すべてが気になっているであろう「呼吸」について検証していきます。

 

呼吸することでカラダに何が起きるか?

まずはじめに、「呼吸」というものが一体何なのかをクリアにしておきましょう。

皆さん、ご自身の言葉で「呼吸とはこういうモノである」という説明ができるでしょうか?

口に出さなくてもいいので、だいだいこんなことかなーということをイメージしてみてください。

おそらく多くの方がイメージされているのが「横隔膜が収縮ことで肺が陰圧になり、体外からの空気を吸い込む。その反対に、横隔膜が弛緩することで肺の空気は体外に吐き出される」ということだと思います。

もちろんそうなのですが、このイメージには足りないことだらけなのです。
このイメージの中で考慮されているのは横隔膜と肺です。
事実、呼吸時に肺と横隔膜は大きく動くきます。
しかしながら、それに付随してたくさんの部位が動くのです。
たくさんの部分が動くにも関わらず、腹式呼吸では「肩を動かさない」ということを教えられるのは深い謎です。
呼吸するとき、肩は動きます。動いてしまいます。それを「肩を動かさない」なら呼吸が制限されてしまいますよ。

なぜ肩が動くのかというと、呼吸にあわせて肋骨が動くからです。

 

呼吸するとき、肋骨は?

これまた腹式呼吸では「胸は動かさない」という教えがありますよね。
これもおかしな話です。

その理解にボディマッピングが役立ちますので、皆さんも考えてみてください。

肺は肋骨の内側にありますよね?
肺が膨らむと肋骨はどうなりますか?

はい、その通り。
肺の膨張と収縮にあわせて、肋骨も動きます。
動いていいんです。

肋骨が動くと言うことは、当然胸も動きます。
胸を動かさないということは肋骨の動きを制限しているということ。肋骨が動くことを許さないと、肺も膨らむことを許さないことになります。

腹式呼吸といいながら、肺の膨張を制限するようなカラダの使い方をしていませんか?

 

動きたいところが動いていい

私たちはどうもお手本があるとその型どおりにやってしまいがちです。

型の美しさに意義があるなら、お手本通りの型を追求すべきだと思うのですが、呼吸についてはお手本の通りに美しくできたからといって、それが発声やパフォーマンスに役に立つのでしょうか?

腹式呼吸においては、動かすところと動かさないところがあります。
ところが、先ほどの肋骨の例の通り、呼吸するということは肩や胸は勝手に動くのです。
動かさないということは、呼吸の動作に反していると思いませんか?

呼吸をすることでカラダのバランスはほんの少しだけ変わります。そして全身でそのバランスを支えています。
横隔膜の収縮や弛緩、肺の膨張と収縮にあわせて、骨や筋肉は動いています。

呼吸には無関係と思われる足も、大きく関係しています。
横隔膜が付着している腰椎や胸椎のあたりから、大腰筋も付着しています。そのため、呼吸をすると、大腰筋もわずかに働くのです。

このとき、大腰筋がガチガチに固まって仕事ができないとなると、横隔膜も自由に仕事をすることができません。先ほどの肺と肋骨の関係のように。
呼吸だけでなく、歩くとか食べるというあまりにも日常的な動作においても同じです。

歩くという動作は、足の動きだけで実現しているかのようですが、実際には上半身も動いています。

足を動かすという動作の連続において常々変わり続けるバランスを、上半身も含めたカラダ全体を使って見事にとり続けているのです。
こんな風に、人間の体はありとあらゆる部分が協調しあって一つの有機体として存在しています。

にもかかわらず、私たちは自分自身が協調することを無意識のうちに妨害しています。

呼吸する。原稿を読む。演技をする。
こんな時、あなたのカラダではどこがどのように動いているでしょうか?

それを知ることがパフォーマンスの向上につながるでしょう。

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