こんにちは。
ボイトレをさせないボイストレーナーのトクガワ です。

 

声界隈でよく耳にするのが「声をあてる」ということ。

レッスンでもよくアドバイスされている方は多いでしょう。

もし先生から「もっと声を当てた方がいいよ」っていうアドバイスされたあなたはきっとこんな返事をするはず。「はい!」とか「わかりました」とか。

間違っても「それって具体的にどうすればいいんですか?」なんて質問できないですよね?

だって、そんな質問しようもんなら、あなたは先生から「こいつ、わかってねーな」とか思われる危険を伴いますからね。

特に養成所での先生や稽古場での演出の方にそう思われようもんなら、かなり損だと思いますよね?

だから質問したいことがあっても質問できないんですよね?

わかります、その気持ち!!!

わたしもレッスンに通っていたときは、先生の評価を気にしてばかりいましたから。

 

でも教える側になって気づきました

そんなレッスンの場をつくってしまうのは、生徒が学んだり成長したりするのを妨げるだけなんです。

教える側が生徒を評価することで、教える側が自分に安全な居場所をつくっているだけ。

 

そんなわけで、今回は先生に質問したくてもできないことの一つである「声をあてる」について詳しく解説したいと思います。

ちなみに、今回紹介する「声を当てる」について、私がバイブルやと思っている本フレデリック・フースラー著『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』で綴られていることをベースに、私の理解を紹介します。

 

声を当てるとは

まず初めに質問。

あなたは「声を当てる」はどんなことやと考えていますか?聞かせてください。

LINE@から教えてくれるとめっちゃ嬉しいですけどもちろん私に伝えなくてもOKです。

でもメモアプリやメモ用紙でも良いので言葉で表現して置いてください。

声に出してもOKです。

全くわからない、想像がつかなくてもOKです。

ここでしておいて欲しいことは「声を当てる」こととはあなたにとって一体どういうことなのかを具体的にしておく作業です。

ほんの少しだけで良いので時間を取って考えてみてください。



何か思い浮かびましたか?

私に教えてくれなくてもいいですけど、言いたくてたまらない方はLINE@で教えてくださいw

もし、まだ何の考えも浮かんでいない方は、なんでも良いので1つ思いつくまで先に進まないでください。

ホントに簡単なことでも良いですよ。

「この辺に音がぶつかること」とか、「空気をこんな風に使うこと」とか、「声が部屋の壁に当たって跳ね返ること」とか、あなたが思ったままで良いです。

それは正解でも間違いでもありません。

まず最初のステップとしてあなたが「声を当てる」ことをどんな風に考えているかをあなた自身が気づく必要があるからです。

この気づきの過程を飛ばすと、学びのプロセスの効果は格段に落ちます。非効率的。

闇雲に手当たり次第学びたいならそれでもいいですが、ちょっとでもラクしたいですよね?

「最小限の努力で、ラクしていい声になっちゃおう」というのが声のトリセツのテーマなので、皆さんにも最小限の努力でラクしていい声になってもらいたいなと思います。

声のトリセツを読んでくれている方の中には、辛いことやカラダを酷使してこそ上達があると考えている方もおられるでしょう。

そんなん疲れるので損ですよ。

でもそんな風に学びたい方がいるのも事実。

そんな方はぜひ、他のサイトや他の先生に学ばれることをオススメします(笑)

 

 

フースラーによる「アンザッツ」という理論

では本題にいきます。

フースラーの『うたうこと』にはアンザッツという、いわゆる声の当て方について綴られているのですが・・・

歌手は、頭頂部・前頭部・鼻根部・上顎部・歯列部などに振動を感じ、それを「声を当てる」と言ったり、声に「置き所」を与えるなどと言う。物理学的に見れば、声は速やかに飛び去ってしまうものだから、「ある所に置くこと」など、もちろん不可能である。

出だしから不可能と言い放ちます。あらら。

果たして「声をあてる。つまり・・・どこに?何を?どうやって?」について、全て否定されてしまった気がしますw

そもそも声をあてること自体が不可能なのか???

どっかの誰かが言った都市伝説でしかないのか???

だがしかし、この「当てる」ということによって生じる独特の音響効果は、歌手自身も聴く人も、だれでも感じ取ることができる。声の音響的研究では、この振動が声の響きを作り出しているというころは否定されており、確かにそれは当然である。けれどもなお、そういう音響現象があることには変わりはない。

・・・結局なんやねん!

古い本って大切なことが書かれているのですが事細かに説明しようとしているせいか、ややこしい。

私の解釈で言い換えますね。

例えば、頭頂部とかに「声を当てる」ことで感じる振動は声の響きには関係ない。でも、確かに音響効果が存在している。

ということですね。

どうやらフースラーも、声をあてるということの効果を認めているようです。

しかし、一つ注意して欲しいのが、声を当てることでカラダに感じる振動が、声の響きを作り出しているのではないと記しています。

だったら声を当てるって何のためにしているの???と思いますよね。

フースラーは次のようにまとめています。

したがっていろいろの声の当て方によって、歌手は、内喉頭筋及び外喉頭筋の神経支配のやり方を目覚めさせる。そして内および外喉頭筋の働きに応じて反射的に、上記の諸点に、例の振動が引き起こされるのである。

「声をあてる」とは声の響きをつくったりするための練習ではなく、内喉頭筋や外喉頭筋の神経支配を目覚めさせるための練習だということです。

多くの人は喉頭周辺の筋肉、つまり声をつくるための筋肉のほとんどは使われずに眠っています。

声をあてることで、これらの筋肉が仕事をするように少しずつ少しずつ目覚めさせていきくということです。

そして少しずつ少しずつあなたの声が持っている本来の魅力を呼び起こしていくのです。

もし声を当てる練習をするなら、響きをつくるための練習ではなく発声器官をつくる筋肉を目覚めさせるための練習と考えて取り組むようにしましょう。

では、フースラーが提唱する声の当て場所と目覚めさせられる筋肉、つまり発声器官に喚起される働きを見ていきましょう。

 

6つの「声の当て場所」

フースラーがアンザッツで示している声を当てる場所は6箇所あります。

 


『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』
図56 声楽家たちのあいだでふつう用いられる声の当て場所の典型

 

門歯に声を当てる

主に上の門歯(下も含むことがある)に声を当てると声帯は互いに接近し、声門が閉じます。

この当て方をすることで、声門を閉鎖するための筋肉が使われます。

門歯とは、前歯のうち、真ん中にある上下の歯です。上下あわせて4本あります。

それらは側筋や横筋というもので、【毎日たった1分で声が変わる方法】を紹介したときに出てきた筋肉ですね。

詳しくはこちらで ↓↓↓

 

このとき、甲状舌骨筋が喉頭を高く引き上げます。そのため喉としての空間は狭まるので強い声を出すのには向いていません。

また甲状舌骨筋が働いているのですが、その対抗の役割をする相手役の筋肉は働きません。(相手役の筋肉は、胸骨甲状筋や輪状咽頭筋)

そのため、こればかり練習するのは望ましくないようです。

このアンザッツによって、声は「前に」「位置する」。しかし、これにもっと他の働きが付け加えられないと、声はふくらみがなく、平たく、つやがない。

 

胸骨の最上端に声を当てる

声を胸骨の最上端に当てると、前歯に当てたときと同じく声門の閉鎖が強くなります。

フースラー曰く、この方法が声門を閉鎖する筋肉を働かせるための最も基本的なやり方かつ最も危険の少ないやり方だそうです。

胸骨の最上端とはここ。ちょうど鎖骨との関節があるとこらへんですね。ちなみに、腕の始まりはここです。

胸骨の最上端に声を当てることで胸骨甲状筋が働き、喉頭が上方へ引っ張られるのに対抗することができます。

フースラーが最も危険の少ないやり方と言っているのは、3−1の門歯に当てる時には甲状舌骨筋という喉頭を引き上げる役目の筋肉だけが働くのと、胸骨の最上端に声を当てるときには胸骨甲状筋も働くので喉頭が上に引っ張られて固定されることが習慣化されるという危険を回避してくれるからです。

このアンザッツによって、よくとおり、生き生きとしたひびきのある、いわゆる「開いた=明るい」−が平たくない音色が生まれる。

 

鼻根部、上顎部に声を当てる

鼻根部、つまり鼻の根本あたりに声を当てると、声帯筋が働くと同時に声帯の伸展が喚起されます。こうすることで、声帯筋が発声に役に立つようになります。

このアンザッツでは鼻腔が開かれており、甲状軟骨は前下方に引かれ、発声器官は、歌手がよくううように「開いて」いる。声帯は全長にわたって振動する。それだから、いわゆる「充実した声」がでてくる。

しかしながら、鼻根部に声を当てたときには声帯筋の辺縁はまだ活動していないようです。

そして上顎部(硬口蓋の前の方)に声を当てると、声帯筋の辺縁の筋肉が活潑になります。

これによって、声門の閉鎖が完全なものとなります。

このアンザッツの状態では、声帯の縁だけが振動し、またそのために、多くの場合、声帯のある部分だけ振動することも明かである。

このふたつのアンザッツは、声帯の内筋に、最高限度に自発活動性を与えるものであって、声帯の「自発振動」へ通じる途と思われる。

 

頭頂部、軟口蓋に声を当てる

頭頂部(アタマのてっぺん)と軟口蓋に当てると、胸骨甲状筋や口蓋咽頭筋が働きます。

これによって、胸骨甲状筋や口蓋喉頭筋が働きます。喉頭が前側前方と上側後方に引っ張られている状態になります。それによって声帯も伸展します。

胸骨甲状筋や口蓋喉頭筋を位置を確認すれば、喉頭がどのように引っ張られているかをより理解しやすいかもしれません。

それらの筋肉については【大きい声を出すと、すぐに声が疲れる・声が枯れる理由】で詳しく紹介しています。

 

ちなみに、軟口蓋は口の中の上の部分で奥の方のやわらかいところです。

舌を前歯の裏につけてそのまま口の上側を屋根にみたてて、屋根をたどって行くと固いところから柔かいところに移ります。

固いところは硬口蓋、柔らかいところが軟口蓋です。

もしかしたら、舌で軟口蓋まで行くのは難しいかもしれません。

このアンザッツは、前部の喉頭引き上げ筋である甲状−舌骨筋(声門閉鎖筋の協力相手)が強く働かないようにする。声帯内筋は−しいて働かせようとしない限り−まったく働かないか、ほとんど働かない。

 

前頭部に声を当てる

前頭部に声を当てると、声帯周辺の筋肉はほとんど関与しない、またはわずかしか関与しないようです。

前頭部とはだいたい眉間のあたりをさしているようです。

ここに声を当てると、甲状舌骨筋が働き、喉頭が引き上げられますが、その対抗の役目をする筋肉は働きません。

そして、輪状甲状筋が声帯の働きに関与します。

このアンザッツでは、正門は閉じても、その中央部に小さな楕円形の開きを残している。
声は、いわゆる「純粋の頭声」よち、はるかにふくらみが少なく、むしろいくらか「開いた」印象を与える。

 

うなじに声を当てる

最後の声を当てる場所はうなじです。

うなじに声を当てることで、輪状甲状筋が働き、声帯は最大限にぴんと張られた状態になります。

また声門は少し開いています。

それは、美しいひびき、よくとおること、充実した豊かさを作り出すために、書くことができない。
高音域はこのアンザッツによって自由になり、まさに無限となる。いわゆる「充実した頭声」が生まれる。傑出した歌手は、意識する しないにかかわらず、みな このアンザッツをやっている。

 

発声器官の働きを目覚めさせる

さて、ここまで6つの声の当て場所を紹介してきましたが何か気づいたことはありますか?

それぞれのポイントに声を当てるとき、実は喉頭を懸垂している筋肉の使い方に変化が起きています。

それらの筋肉の状態が異なるために声帯周辺の筋肉の緊張度合にも影響を与え、声に変化をつくり出しているのです。

でも、これらの筋肉は私たちが日常生活を行う上ではほとんど使われない筋肉なので、随分鈍っているわけです。というか、ほとんどお休みしています。

これらの筋肉が目を覚まして、仕事をしてくれるようになれば、今よりはるかに少ない力でいろんな声を使うことができるようになるわけです。

声を当てることは響きをつくるためにしているのではなく、眠っている筋肉を使うことでそれらの筋肉を目覚めさせることためにしていることなのです。

はじめの頃は、声を当てる場所を意識して声を出してみてください。そのうち変化に気づきます。声を当てることで、ある筋肉が働いていると感じることができるようになる瞬間が訪れます。

そうすれば、声の当て場所よりも、その筋肉を意識して使いながら声を出すことができるようになるでしょう。

その繰り返しで、あなたの声にどんどん磨きがかかっていきますよ。

 

まとめ

声を当てる場所を変えると当然、声は変わります。

声を出すための楽器であるカラダの使い方を変えるので、声が変わらない方がおかしいです。

しかしながら、この現象を教える側がレッスンで誤用してしまうと、生徒が損をします。

もし今まで誰かに「響きをつくるために声を当てる」とか「○○な声を出すならここに当てる」とか教わったなら、その考えは忘れてください。

声に変化が起きたのは、声を当てる場所を変えたことが直接の原因ではありません。

声を出す時のカラダの使い方の変化させることで、声を当てる場所が変わり、その結果として声に変化が起きたのです。

今まで声を当てる練習をしてきた方は、今一度、声を当てる練習をする目的を考えることをオススメします。

あなたがどんなカラダの使い方をしたか?

その結果、生まれたものが声なのです。だから結果からアプローチするのはかなり危険です。

結果は、海から見えている氷山の一角で、その下にはめちゃでっかいものがあるんですから。

そのことについては【声をあてるとよくないことがあるってホント?】で紹介しています。

 

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