良いボイストレーナーの見つけ方 - 声を破滅させる指導を受けないために

こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。

 

ボイストレーニングや声のレッスンの現場においては、非常に多くの方がそれぞれの指導方法に基づいて教えられています。

生徒の自主性を重んじる方もいれば、「つべこべ言わずに言われたとおりにやれ」タイプの指導をする方もさまざま。

教わる側にとっても、合う教師・合わない教師がいるのも事実です。

また、残念なことに中には欠点を作り出してしまうレッスンをしている教師もいるのです。

しかしながら、その教師は「正しいこと」を教えていると信じています。

こんな方について行ってしまうと、あなたの声を破滅させる恐れもあります。

今回は、いいボイストレーナー(発声指導教師)の見つけ方について考えてみましょう。

 

オーソドックスなレッスン

ボイトレやスクールに通ったことがある方は、あなたが受けたことのあるレッスンの進め方や内容を思い出してみてくださいね。

私もいろんな場所でいろんな先生に教わりました。

その中でもやはりオーソドックスな進め方というか、レッスンの形式があります。

例えば、こんなレッスン。

生徒が声を出す(朗読や原稿を読んだり、歌を歌ったりする)
教師は生徒の声に「欠点」があることを確認する
「欠点」を改善するための方法を探す
テクニックやある決められたやり方を指示する
例えば、「声の支え」を変えたり、「声の当て場所」を変えるとか。
うまくいく
生徒は、それが「正しいこと」だと信じる。
教師は、他の生徒にも「正しいこと」を教える

あなたが受けたレッスンもこんな流れではないでしょうか?

この一般的なレッスンは、実はかなり危険なレッスンなのです。

 

どこがいけないのか?

この一般的なレッスンの中に、どんな危険が潜んでいるか見ていきましょう。

 

そもそも生徒の声に「欠点」はない

『教師は生徒の声に「欠点」があることを確認する』

教師は生徒の声に「欠点」を見いだそうとします。しかしながら、生徒の「声」に欠点があるわけではありません。

声は発声器官の使い方による結果でしかありません。あくまで「症状」でしかなく、欠点ではありません。もちろん、その症状が悪いものであるとも限りません。いい症状、つまりすばらしい声が出ていることもあります。

ここで知っておいて欲しいことは、声はある方法で発声器官が使われているために出た結果なのであって、そこに欠点が含まれているわけではありません。

 

教師が「正しい」と信じている決められたやり方

『テクニックやある決められたやり方を指示する』

例えば、声の当て場所を変えさせたり、声の支えを変えさせたりという指示をするわけですが、ここには教師が「正しい」と信じているある特定のやり方が含まれています。

お腹から声を出す、喉を開く、骨盤を入れる、などなどいろんな指摘がありますが、この指摘は教師がただ一方的に「正しい」と信じているだけでしかなく、生徒の声に起きている症状にどう作用するかはわからないのです。

生徒の発声器官を含めたカラダの使い方を見て、それに対する的確なアドバイスをすることができる教師は別ですが。。。

 

うまくいくと欠点をつくり出してしまう・・・

『うまくいく』
『生徒は、それが「正しいこと」だと信じる。』

ここがとっても影響の大きいポイントです。
しかも、教師が「正しい」と信じていることを指摘し、生徒がそれをやったとして、その結果がうまくいったなら、生徒も教師もハッピーのはずなのですが・・・

まず、生徒はそれを「正しい方法」だと認識し、以降はそれを注意するようになります。しかしながら、これは発声器官のある一部分を孤立させてしまう傾向があります。

発声とは全身運動であるにもかかわらず、教師が指摘した「正しい方法」を注意して練習することで生徒の発声は全身運動からその「正しい方法」だけが切り離されてしまうのです。

ゆくゆくは「正しい方法」のみをつかって、その他の発声器官は使われなくなってしまうかもしれません。

そして他の生徒にはさらなる悲劇が待っている

『教師は、他の生徒にも「正しいこと」を教える』

ここからもう一つの悲しいことが起きます。

さらに、教師は「正しい」と信じている方法が有効に機能したので、他の生徒にもその「正しいこと」を教えるようになります。AくんとBくん、2人の生徒がいてそれぞれに同じ声の症状を見いだしたとしても、その原因となるものは全く違います。しかし、AくんとBくんに「正しいこと」を教えるのです。

教師が「正しいこと」を指摘した後、Aくんうまくいきましたが、しかしながらBくんはうまくいきません。

すると教師はBくんの努力不足や能力不足を指摘します。当然、Bくんは傷つくわけです。

多くに教師が生徒の努力不足や能力不足を糾弾する権利があるかのように振る舞っていますが、私はそれは生徒のモチベーションや将来を奪う重大なことだと考えます。

このケースでいうと、Bくんには別の指摘が有効であるはずなのに、教師が「正しい」と信じていることをただ押しつけているだけですよね。

 

このレッスンが欠点をつくる

ボイトレやスクールのレッスンでよく見かけるオーソドックスなレッスンの内容だと思うのですが、残念ながら生徒に欠点を作り出してしまう内容でもあります。

 

生徒が「正しい」ことを大切にする

一見、メリットがあるようにも感じるのですが、発声というのは全身の運動です。そこには考え方もカラダの使い方も含まれます。

教師が「正しい」と信じていることは、発声におけるほんの一部分で起きていることを取り上げていること。それを注意しすぎるあまり、それだけを発声器官の運動から孤立させてしまいます。

 

「正しい」こと以外は使わない

孤立させてしまうだけでなく、それ以外の発声に関係する運動が一切考慮されなくなってしまいます。教師から「正しい」と教わったこと以外は不要なことだと考え、「正しい」と教わったことさえしておけばいいという傾向を持つようになってしまいます。

その考えはやがて、発声器官の運動はだんだんと使われなくなってしまい、声を出すという機能が全体的に衰弱していきます。

 

まとめ いいボイストレーナーとは?

さて、あなたが教わっているボイストレーナーは「正しい」と信じていることを教えようとしている人ではありませんか?

先の例のように欠点を作り出すレッスンを続けていると、いつかあなたの声を破滅させる恐れもあるので十分に気をつけてくださいね。
最後に、いいボイストレーナーを探すために役に立つアイディアを紹介します。

学びの段階に応じて3つのタイプの教師が必要だ、という話を聞いたことがありますか?

私のアレクサンダー・テクニークの師匠であり、ワシントン州立大学大学院で演劇クラスの指導にあたっているキャシー・マデン氏が話してくれたことを要約したものです。

 

学びの段階に応じて、3つのタイプの教師が必要。
1. 基礎を忠実に教えてくれる教師
2. 表現する楽しさを教えてくれる教師
3. その2つを融合する教師

 

学びの段階に応じて、生徒であるあなたが受け取れることができる内容は異なります。

 

あなたの今の学びの段階はどのくらいなのか?

今のあなたが必要としている教師はどのタイプなのか?

 

いつも、あなた自身の今を大切にしながら何が必要なのかを考えて「誰に教わるか?」を選んでくださいね。

 

ちなみに、私は「教師の本来の役目」は生徒の可能性を引き出したり、生徒が望んでいることをできるようにサポートをすることだと考えています。

なので、私がどのタイプの教師かというと、3のタイプですね。

 

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