パフォーマンスをしているときの肘の位置、
気にしたことありますか?
原稿を読むときしかり、演技をするときしかり、パフォーマンス中に限らず、日常生活においても気にしないことがほとんどです。
私もそうです。
肘の位置なんて気にしたことはありませんでした。
あることに気づくまでは!
そのあることとは、「肘の位置が発声に影響を与えること」です。
というわけで、今回は肘について詳しく取り上げたいと思います。
腕はどこから始まっているか?
肘について考える前に、腕について考えてみたいと思います。
肘は、上腕と前腕がジョイントしている関節です。
上腕部は上腕骨、前腕部は橈骨と尺骨、
これらの骨がジョイントしている部分が肘といわれる部分です。
腕を広義にとらえるならば、肘が含まれているわけです。
そのため、まずは腕からアプローチしていきます。
さて、腕はどこから始まっているでしょうか?
ここが腕のはじまりだと思う箇所、ご自身のカラダで触れてみてください。
皆さん、触れる箇所は異なると思いますが…
正解は
ここ!
左右の鎖骨と胸骨のジョイントしているところ、胸鎖関節です。
解剖学的な腕のはじまりは鎖骨なんです。
腕の下にあるもの
腕は鎖骨から始まっているということがわかったので、次はその下にあるものについて考えてみましょう。
鎖骨の下には何があるでしょうか?
ご存じの通り、肋骨がありますよね。
そして肋骨の内側あるのは肺です。
鋭い方はお気づきだと思います。
そうです。腕の動きが、肺に影響を与えるのです。
いわゆる腹式呼吸でいうところの「肩を動かさずに」というのは、鎖骨を動かさないこと。
そうすると、その下にある肋骨が上方向に動くのを制限するわけです。
(腹式呼吸がいかに人間の体の構造に反した呼吸法であるかはメルマガに詳しく書いてあります)
呼吸が制限されるということは、発声によい影響をもたらさないということは明らかですよね。
肘の位置が発声に与えるもの
いよいよ今回のテーマである肘について。
鎖骨の動きが制限されると、発声に望ましくない影響を与えるということは、鎖骨の動きを制限する動作であれば、発声に望ましくない影響を与えるわけです。
ここで肘の動きに注目してみましょう。
台本や原稿を持つとき、肘はどこにあるでしょうか?
いわゆる「脇を閉める」という状態になっていませんか?
実は脇を閉めると、鎖骨の動きが制限されてしまいます。
脇を閉めることで肘が脇腹に近づくわけですが、このとき上腕部の筋肉が作動し、わずかに鎖骨が下側に引っ張られます。
鎖骨が上方向に動くのを制限されるため、肺の上方向の膨張が制限されてしまいます。
肘が脇腹に近づくことで、肋骨の横方向への動きも制限されてしまいます。
肘が押さえつけているわけですから明白ですよね。
肋骨の横方向への広がりが制限されるということは、肺の左右への広がりも制限されるということ。
脇を閉めると、肺の上方向と横方向への広がりが制限されてしまうのです。
このように、肘の位置が発声や呼吸に望ましくない影響を与えるのです。
さて、どうしましょう?
肘の位置なんて気にしない
肘の位置で発声や呼吸が変わるということが分かりました。
では、発声や呼吸にいい影響を与える場所に肘を置きたいですよね。
鎖骨と肋骨の動きを制限しない位置を探る?
いやいや、そんな冒険の旅にでる必要はありません。
肘の位置なんて気にしなければいいのです!
肘の位置の話をしながら、位置なんて気にしない!?
無責任な発言と思われそうです。
ここでいう「気にしない」というのは、「意図的にコントロールしない」ということ。
肘の場所をコントロールするのではなく、あるべき位置に来ることを許してあげるということです。
「肘を曲げる」から「肘は曲がってくれる」
この二つの表現には明らかな違いがあります。
前者は、意図的に曲げるというアクションをすること。
後者は、何らかのアクションをした結果、肘が曲がるということを誘発されたもの。
「意図的にコントロールしない」というのは後者に当たります。
原稿や台本を持つときも、後者のように肘を意図的にコントロールしないで持つことができれば、肘はしかるべき位置にいき、呼吸や発声に望ましい影響を与える恐れは取り除かれます。
では、肘を意図的にコントロールせずに原稿や台本を持つことにトライしてみましょう。
まず、何もしなくていいので、ただ腕をおろしてください。
原稿や台本は一旦はもたずに置いておきます。
腕を使うときにはほとんどのケースで三つの関節が働きます。
手首、肘、肩ですね。
この三つの関節があることを思い出して欲しいのです。
まずは左右どちらかの手首の関節を意識しながら、掌を裏返したり、手首を曲げたりしてみます。
手首の可動域を感じることができたなら、同じ要領で肘や肩の関節も動かしてみましょう。
三つの関節の可動域を感じられたら、またはじめのようにただ腕をおろしてください。
さて、今関節の可動域を感じた側の腕と、まだ何もしていない反対側の腕とでは何か違いがありますか?
もし何も変化を感じないのであれば、まずはこの違いを感じられるように、日々自分のカラダの動きを観察して見てください。
ここからは違いを感じられたことを前提でお話ししていきます。
次は、先ほど動かした方と反対の手、腕、肩を同じ用に動かしてみましょう。
ある程度動かしたら、またおろします。
左右の違いはなくなった、または近くなるでしよう。
では右でも左でも好きな方の手で原稿を取ります。
そして、原稿を見やすいところまで持ち上げるのですが、ここからがポイント!
「原稿が私に近づいてくる」と思いながら動かすのです。
原稿がリーディングエッジとなって、その動きに手や肘、腕がついて行くのです。
そう思うだけで、肘は意識的にコントロールせずとも曲がってくれます。
その証拠に今の手順で原稿を持ち上げたときの肘の位置は、今まで何も考えずに原稿を持ち上げたときと比べてどうでしょうか?
より胴体から離れていると思います。
肘を意識的にコントロールしない方が肋骨の動きを邪魔しないので、発声の妨げになることがないのです。
では原稿を読んでみましょう。
どんな声がでるでしょうか???
是非試してみてください。