「横隔膜を意識して」って言うけど、アナタどれくらい知ってるの???

B!

こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。

 

ボイトレを習ったことがある方や声の仕事を目指している方は一度は言われたことがあるんじゃないですか?

もっと横隔膜を意識して!」って。

ぶっちゃけ、こんなこと言われてもサッパリわかんなくないですか?
私も言われたことありますけど、よくわかりませんでした。

だって、自分の横隔膜って見えないし!

目で確認できないモノをあーだこーだ扱うから、色んな誤解が生じるわけです。

先生「もっと横隔膜を意識して!」
生徒「はい、わかりました!あえいうえおあお・・・」
先生「足りない!もっと意識する!!」
生徒「はい、わかりました!あえいうえおあお・・・」
先生「ヨシ、イイ感じ!!」

こんなやりとりがさまざまなレッスン現場や稽古現場で行われているわけです。

違和感極まりないw

先生、あなたどうやって判断したんですか?

ぶっちゃけアナタもこんな体験したことありません?

よくわからずダメ出しされて、よくわからずOKもらった経験ありませんか?

横隔膜を意識しろと言われますけど、そもそも何をどう意識するのか全く教えてくれませんよね?

私は横隔膜について詳しく教えてくれる人に出逢ったことがありません。だから自分で調べるしかなかったわけです。

もしアナタがこんな悩みがあるなら、きっと今回の記事は役に立つはずです。

・「横隔膜を意識して」といわれたが、何をどうしていいかわからない
・横隔膜についてもっと知りたい
・声に張りがない
・声が小さい
・声が通らない

などなど、横隔膜は呼吸と密接に関係しているので、横隔膜について知ることで声も変わります。

でね、声が変わるってことはあなたのカラダの使い方と思考の習慣が変わったことを意味します。

それが私がいつも言っている「声はあなたの全てでできている」ということ。

もし今の自分の生活が気に入らないとか好きになれないとか、何かを変えたいと望むなら、まずは声を変えるところからはじめることをオススメします。これこそ今の時代に合った自分磨きです。

では、今回のテーマである横隔膜について、いってみよ!

 

横隔膜はどこにあるのか?

まずはここからいってみましょう。横隔膜の場所です。多分、ほとんどの人は知っていると思うのですが、改めて確認しておきましょう。

何度も確認することで、記憶に残りやすくなるとともに新しい発見を得られることもあります。

いつも同じ角度からじゃ面白くないので、今回は別の角度から見てみましょう。

 


引用:『プロメテウス解剖学 コア アトラス 第2版』
図6.13 原位置の横隔膜
A 上方から見たところ

 


B 下方から見たところ

 


C 横隔膜の開口部,左外側方から見たところ

 

今回はいつもと違う角度から見てみました。

Aが上から、Bが下から、Cは左から見た横隔膜です。

 

さて、ここにはアナタの知っている横隔膜がありましたか?それとも、あなたがイメージしていた横隔膜とは違うものがありましたか?

いずれにせよ、横隔膜について知ることは大切なので、新しい気づきがあると嬉しいです。

いつもの角度の図解とともに、横隔膜についてもう少し詳しく知りたい方は【いまさら聞けない!横隔膜のお話】に書いてあるのでこちらを読んでみてください。

 

横隔膜の役目は?

次に、横隔膜の役目について見ていきましょう。

まず、横隔膜は胸の空間とお腹の空間を分けています。横に隔てる膜という漢字の通りですね。

ちなみに横隔膜のすぐ真上に心臓が乗っかっているのって知ってました?

でね、心臓がすぐ真上にあることに関係があるのかどうかは分かりませんが、横隔膜についての興味深い考察をまとめてみました。魂がこもった声について興味がある方は【人とは違う横隔膜の使い方をしてみよう】を読んでみてください。

 

そして皆さんご存じ横隔膜のお仕事。それは呼吸筋としての役目です。

呼吸筋とは呼吸をする時に働く主要な筋肉です。(その補助をしている呼吸補助筋というものもあります)

ちなみに「呼吸筋」や「呼吸補助筋」という名前の筋肉があるのではなくて、呼吸の際に重要な役割を果たす筋肉の総称なのでお間違いなく。

そして呼吸筋の中でも呼気筋吸気筋という分け方をされています。

読んで字のごとく、呼気筋は息を吐く時に仕事をする筋肉で、吸気筋は息を吸う時に仕事をする筋肉です。

横隔膜はどちらに分類されるかというと、吸気筋に分類されます。息を吸う時にお仕事をしてくれる筋肉ですね。

たまーに息を吐く時にも横隔膜にお仕事をさせようとしている方を見かけますが、これは不要です

iPhoneにメジャーの役割をさせようとしているようなもの。(ちなみに、なぜメジャーの例を出したかというと、レイザーラモンRGさんのiMajorのネタが大好きやからw)

なので、横隔膜には息を吸う時にお仕事をしていただいて、息を吐く時には何も特別なことをしなくてもいいんです。つまり、声を出すときには横隔膜には特別なことをさせなくてもいいということ。

もしかして、あなたは声を出すときに横隔膜をコントロールしようとしていませんか???

全くそんな必要はないですよー!

余計なことをさせようとすると、それはカラダを固めることに繋がってしまいます。それは声を出すことにおいては助けになることはおろか、邪魔にしかなりません。

横隔膜さんには息を吸う時にきっちりお仕事をしてもらえれば十分なのです。

 

横隔膜は自分の意思で動かすことができるのか?

さて、横隔膜のお仕事が明確になったので、もう一つ考えてみて欲しいことがあります。

横隔膜は随意筋なのか不随意筋なのかということです。

随意筋とは、自分の意思で動かすことのできる筋肉の総称です。不随意筋はその反対。自分の意思で動かすことができない筋肉です。

この横隔膜は随意筋と考えている人もいれば、不随意筋と考えている人もいるようです。

ここで私の考えを発表します。

横隔膜は・・・・

随意筋か・・・

それとも、不随意筋か・・・

ダダダダダダダダ(ドラムロールの音だと思ってください)

ジャン!!

横隔膜は随意筋であり、不随意筋です!!

どっちやねん!!!w

それはね、自分の意思で動かすこともできれば、自分の意思と関係なく動くからです。

普段、私たちが呼吸をしているとき、横隔膜は勝手に動いてくれます。つまり私たちが意図して横隔膜を動かそうとしなくても動いているのです。

これを聞いて「私、そんなことありません!!」っていう人はいますか?

もしあなたの意図していないときに横隔膜が働いていないとしたら、息を吸ということが行われていないことになります。つまり、あなたはもう死んでいる状態です。生きている限り、横隔膜は動き続けているのです。

「勝手に動いている」と書くと横隔膜が自分の判断で動いているように思ってしまうかも知れませんがもちろんそんなことはありません。

厳密に言うと、呼吸中枢と呼ばれる部分が延髄にあって、それが呼吸を制御していると考えられています。横隔膜は呼吸中枢によってコントロールされているわけですね。

 

そして、自分の意思でも動かすことができます。大きな声を出すときや思いものを持ち上げる直前、大きく息を吸ったりすることがありませんか?

その時はたくさんの酸素を取り込むために、普段の呼吸よりも横隔膜を収縮させているのです。それは多くの場合、何らかの意図や目的がきっかけになります。

こんな風に随意筋、不随意筋というどちらの面も持ち合わせていると私は考えています。

巷では横隔膜随意筋・不随意筋論争が繰り広げられているようですが、私はそんな論争や結論づけはどっちでもいいです。

横隔膜について正しい知識を持ってもらうことが私の望みではありませんからね。

私の望みは、あなたが横隔膜のことを少しでも詳しく知ることで、あなたの声や呼吸に役立ててもらいたいからです。

つまり、あなたが声に自信を持ったり、いい声になったり、気持ちよく歌を歌うことがデキるようになってもらうことの方が大切なのです。だから、横隔膜が随意筋であろうが不随意筋であろうがどーでもいいことです。

 

スマホの使いすぎが横隔膜を鈍らせる

でね、私が今回の記事を通じて一番伝えたいことがこれです。

スマホの使いすぎが横隔膜の働きを鈍らせる!!という事実。

はぁ?トクガワ、何言ってんの???めっちゃウケるw」って思ってるでしょ。

でもね、私は電車のなかでスマホを使っている人を見てはこう思うんです。

あーあ、あの人、呼吸苦しいだろうなー」とか
あ、たぶんこの人声出すの辛いだろうな」とかね。

そんなのカラダの使い方を見れば一発でわかります。

だって、みんな息の通り道を圧迫しながら生活してるんですもん。

首を前に突き出して、その状態から下をのぞき込むようにしてスマホに熱中している人は外に出れば山ほど見つかります。

別にこれが悪いわけじゃありませんけど・・・、疲れないんですかね・・・?

そして息の通り道を圧迫してるだけじゃありません。

このカラダの使い方がね、横隔膜の動きを鈍らせると私は考えています。

何でそんなことを言うかというと、私たちのカラダがそうなっているから、としか言えません。

これを理解していただくために、横隔膜をつかさどっている神経のお話をしましょう。

歩く、走る、声を出す、スマホを操作するといったような私たちの全ての行動は筋肉の働きによるものです。筋肉が働くことによって、骨が動かされます。足を上げる、肘を曲げるといった動きは、筋肉が働くことによって骨が関節を支点に動くことで起きています。

筋肉を動かすためには、筋肉に指示を出すための方法が必要です。その方法として、私たちの筋肉には神経が繋がっていて、脳からの指令が神経と通って、筋肉に指示を出しているのです。

横隔膜も筋肉なので当然、神経が繋がっています。

筋肉がどの神経からの指令を受けるか?というのは解剖学の用語で神経支配といわれています。

横隔膜がどの神経からの指令を受けているか、考えたことがありますか?

これを知ると、スマホの使いすぎが横隔膜の動きに影響を与えるということを理解していただけると信じています。

横隔膜は横隔神経という神経からの指令を受け取ります。そして、横隔神経というのは第3頸椎~第5頸椎から起こっていて、この神経だけが横隔膜を支配しています。

頸椎(けいつい)というのは首にある骨。24個の骨が連なっている脊椎ののうち、頸部(首の辺り)にある7つの骨のことです。

第3頸椎は上から3番目の頸椎のこと。つまり首にある骨の3~5番目から神経が出ていて、横隔膜につながってるわけです。

でね、私がなぜスマホの使いすぎが横隔膜の動きに影響を与えるかというと、ほとんどの方はスマホを使うときに首に負担をかけるような姿勢になっているからなんです。

試しに首をギュッと固めてから呼吸をしてみるのと、ギュッとするのをやめてから呼吸をしてみるのを比べてみてください。

明らかにギュッとするのをやめた方が呼吸がラクになるのを体験してもらえるはずです。

あまりギュッとやり過ぎると首を痛めてしまうかも知れないのでほどほどで試してくださいね。

こんな風に首、つまり頸椎の状態によって横隔膜の動きは影響を受けるのです。

 

ボイストレーナー、歌唱指導、話し方講座の講師のような方々が声についての指導される時、多くの方は「横隔膜を意識しましょう」といいます。

私に言わせれば、「そんなもん後からでもいい!

横隔膜の動きに指示を出している横隔神経を邪魔するようなカラダの使い方をしないことの方がよっぽど大事なんです

カラダの使い方がひどい状態なのに、いくら横隔膜の動きを意識したとしても、その効果はほとんど得られません。

もしあなたが声を出すときに、何か上手くいっていないことがあると感じているなら、首のあたりを固めるような動作をしているかもしれません。

そしてあなたは声を出す瞬間に首の辺りを固めるような動作をしていることに気づいていないはずです。

だからスマホを使うときに限らず、アナタが声を出すときに実は横隔膜の働きを邪魔しているのです。

これじゃ、どれだけ横隔膜を意識しても、あまり役に立ちません。

 

まとめ

今回は、色んなトレーナーが横隔膜って言うけど、果たしてみんなどれくらい横隔膜について知っているんだろうか?と疑問に思ったので書いてみました。

私のレッスンに来てくださる生徒の中には「ある先生に横隔膜を意識してって言われたんですけど、全く分からないんです」という方もいますからね。

「先生は何て言ってましたか?」と聞いてみると「とにかく、横隔膜を意識しろ!しか言わないんです」ということがあったので、疑問に思ったわけです。

そもそも横隔膜は改めて意識しなくても、今この瞬間もきっちりやることやってくれてます。

 

今回のPOINT

横隔膜のことを語る前に次のことを知っておこう!
・横隔膜は吸気筋。つまり息を吸う時に仕事をする
・横隔膜は自分の意思とは関係なく動くこともあれば、自分の意思で動かすこともできる
横隔膜を支配している神経は、頸椎から延びている
頸椎(首)を圧迫するようなカラダの使い方は呼吸を邪魔する
・発声練習する暇があったら、日々のカラダの使い方を気にする方がよっぽど大切

ググってみればボイトレや発声練習に関する情報はたくさん見つかります。

そこには色んな方の主義・主張がありますから、それぞれの主張が正しいか間違っているかなんて議論するのは時間の無駄です。その人にとっての事実ですから、外野があれこれ言っても本当に時間と労力の無駄なんです。

もちろん、私が主張していることもあくまで私個人の見解です。だから信じるのも信じないのもあなたが選択できます。そして私が主張していることを試してみて役に立つかどうかも、あなたが試してみるまで分かりません。

役に立つかどうかもその人次第です。Aさんにとって役に立つ方法は、Bさんにとっては役に立たないこともあるのです。

いまさら聞けない!横隔膜のお話】や【人とは違う横隔膜の使い方をしてみよう】に書いた私の考察もあくまでひとつの可能性です。だからアナタに役立つととても嬉しいです。

にもかかわらず、ある界隈では誤解や幻想がまかり通っていて、それをあたかも業界の当たり前であるように考えられていることがあることも事実です。「こんなことも知らないのによく今までやってこれたね」とか「これができないなら諦めた方がイイ」とかね。そんなことに何の意味があるんでしょうね?もはや教える側の職務怠慢でしかないと思うんですけどね。

だから私はボイトレ理論や発声の練習を扱いません。マニュアルに沿った教え方もしていません。レッスンに来てくださる方のカラダの使い方や思考に使い方によって、提案やアドバイスを変えています。もちろん、人によって合う合わないがあるからです。

 

そもそも、テクニックやスキルを学ぶより前に、カラダの使い方を学ぶべきなんです

だって、ほとんどの方は日常生活で自分のカラダに負担をかけるような使い方をしているんですよ?

そんな状態でどんなスキルやテクニックを身につけても、その効果を発揮できるわけないじゃないですか。

というわけで、これからも声を出すために役に立つカラダの使い方のアイディアをどんどん発信していきますね!

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