発声のときに、「胸を張りなさい」というアドバイスを受けたことはありませんか?
このアドバイス、本当に役に立つと思いますか???
今回はこのアドバイスが有効かどうかについて検証してみましょう。
「胸を張る」は逆効果
実は、この胸を張るという行為は、発声にはいい影響を与えません。
その逆で、不要な緊張を与えてしまいます。
胸を張ると、なんだかカラダが開いたような気がしていい声が出そうに感じるのですが、それは気のせいです。
確かに胸は開きます。
ですが、人間の体はどこかで何かが起こると、ほとんどの場合、どこかが連動して動きます。
この場合、胸を張ることでカラダの前側は開くのですが、後側は閉じることになります。
すると左右の肩甲骨の間は狭くなります。肩甲骨が背中の真ん中に向かって引っ張られるわけです。
これが発声に余計な緊張を与えることになります。
肩甲骨から甲状軟骨に繋がる筋肉、肩甲甲状筋というものがありまして、肩甲骨が背中の真ん中に引っ張られると、肩甲甲状筋も引っ張られます。
肩甲甲状筋で生じた緊張は、声帯にも伝わります。
胸を張ることで、間接的に声帯に緊張を与えてしまうことになるのです。
果たして、声を出す上でその緊張は必要かどうかを試してみましょう。
胸を張らずに声を出してみましょう。
当たり前ですが、声は出ますよね。
ということは、声を出すために胸を張る必要はないわけです。
何らかのエッセンスを入れるためであれば、胸を張るという行為は有効に働くときもあると思います。
ただし、胸を張ることで起こり得る緊張を意図的に使うことでないなら、全くの無意味です。
繰り返しますが、声を出すことに胸を張る必要はありません。
なので、声を出すときに胸を張ることをやめましょう。
いや、それでも胸を張りたい!
という方には、胸を張ることが無理をしているという事実をお教えします。
胸を張るとこんなことがおきる
下の画像は、上半身の骨格を右側から見たものです。
(緑色に着色している骨は肩甲骨ですね)
これが普段の状態です。
人間の骨格にとって、最も負担が少なく、かつ最高のパフォーマンスを出すことができる状態です。
胸を張るということは、この状態を捨てて、肩甲骨を後ろ側にひっぱるのです。
胸を張るためには、肩甲骨を後に引き寄せなければなりません。
それに伴い、鎖骨や肋骨までもが後側にひっぱられます。
肩甲骨を後に引き寄せるために僧帽筋を収縮させています。
この動作をしなくても声が出るのに、これをしてしまうことで本当にわずかですがカラダに余分な負荷を与えてしまっているのです。
それなのに、発声の時には胸を張り続けますか???
まとめ
ずっといい声でいたいなら、余分な緊張を与えるのを止めましょう。
カラダが最大のパフォーマンスを発揮できる状態にしてあげましょう。
胸を張るのをやめる。
たったそれだけのことですが、声は出しやすくなります。
無理のない、通りの良い声になります。
カラダから不要な緊張が抜けるわけですから。
そしてその変化は、声以外にも現れます。
さて、あなたにはどんな変化が訪れるでしょうか?
胸を張るのを止めて、声を出してみましょう。