いろんな方にレッスンを受けていると、時に「何をどうすればいいか分からなくなる」という状況に陥ります。
極端な例を挙げると、A先生のレッスンではダメということが、B先生にはべた褒めされるというケース。
こんな時、「では私はどんな読みをすればいいの?」と戸惑ってしまいますよね。
発声や呼吸についてのアプローチも先生ごとに異なりますし、演技や原稿の読み方も先生ごとに異なります。
そして多くの先生に学べば学ぶほど、色んな先生の基準に振り回され、何が正しいか分からなくなってしまう…
そんな経験ありませんか?
人は誰でも誉められると嬉しいもの。
だから、先生に誉められることが嬉しくなって、先生の言うことに従います。
でも、色んな先生の言うことに従い過ぎてた結果、自分で考えることを止めてしまうのです。
特に養成所など、声優・ナレーターとしての将来に繋がる場では、その傾向が強いです。
先生に指摘されたことをクリアしていく。
どんどんとスキルアップしていくようですが、実はそうではありません。
自分で考えることをやめ、与えらたことは難なくこなす。
優等生のようでもありますが、自らの動力を持たず、自分一人では飛ぶことができないグライダーのようなパフォーマーになってしまいます。
とはいえ、レッスンや養成所では先生の言うとおりにできないと叱られますから、その様になってしまうのは当然です。
そしてたくさんの先生に教わるわけですから、全ての先生に好かれようとして、いつの間にか「自分がやりたい読みや表現」を忘れてしまうのです。
このように、たくさんの先生に教わると考えることをやめてしまうから言って、一人の先生だけに教わればいいのかというと、そうではありません。
一人の先生だけに習うと、グライダーの傾向はより強くなります。
基準がその先生のみになりますし、その先生に叱られ続けて、異端と見なされるなら、レッスンへのモチベーションは一気になくなります。
仮にその先生に認められたとしても、やはりその先生の言うとおりでないと表現できない。
そんな風になってしまいます。
パフォーマーは自分で飛ぶことのできる飛行機であることが求められます。
自分で飛ぶことができないグライダーのようなパフォーマーは、ディレクターや演出家には求められません。
飛べるような環境を用意してあげないと飛ぶことができないグライダーより、自分で飛び立つことができる飛行機のほうが、周囲が安心できるのは当然ですよね。
自分で飛ぶことができるように、
つまり、考えることができる声優・ナレーターになるには、思考をアップデートしましょう。
「先生にダメ出しされたことを修正する」のではなく
「私はその箇所をどうしたいのか?を考える」ことにしましょう。
そんな風に考えることができるようになると、
ダメ出しされた箇所に対して自分なりの意見を持つことができるようになります。
自分の意見に基づいて、ダメ出しされた箇所を修正するか・修正しないかの選択ができるようになります。
ダメ出しはあくまで先生側のセンスによる判断です。
冒頭の例のように、A先生はNGを出すが、B先生は誉める事だってあるわけです。
それぞれの先生には異なる目的があり、その目的に近づけてくれるためのダメ出しなのです。
先生のダメ出しの意図、そして自分がその箇所をどうしたいか。
この二つが一致しているなら、迷わず修正すればいいし、一致しないなら好きにすればいいのです。
(本番中のディレクションだった場合は、ディレクターや演出家の意図を読み取り、そのアプローチを採用した方が良いでしょう。)
それを採用するか、それよりも別のものを撮るか採用するかは私たちの自由。
選択する権利は私たち自身にあります。
「ダメ出しをされたからそれに従わなければならない」のではなく、「私は○○したいから指摘されたことを修正したい」というように、目的を達成するためと考えられるようにアップデートしましょう。
ダメ出しをただ修正するため、というのは辛いことです。
自分の意志とは関係なく敷かれたレールの上を進むようなものですから。
でもそのダメ出しをクリアすることで達成できる望みがあるなら、そのレールは自分の意志で進むことができます。
望みを叶えたいという気持ちはとても強いモチベーションに繋がります。
ただ何となくレッスンを受けたり、指摘されたことを修正するだけでは、レッスンを受ける時間がもったいない!
レッスンを「実験の場」と考えて、自分の望みを叶えるための時間にしましょう。
「実験の場」についてはまた次回。
※今回の記事で「グライダー」や「飛行機」という表現を使いました。これは外山滋比古さんの『思考の整理学』に掲載されていた表現です。(「グライダー人間」「飛行機人間」というように表現されています。)興味のある方は読んでみてください。
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