今回のテーマは「姿勢」
ここまでこんな要素について取り上げてきました。
1.原稿を読むときにしている動作を知る
2.感覚、フィードバックは過去のこと
3.肺のマッピング
4.やめる、ゆるめるではなく、何をどのくらい働かせるか?
5.決意はいらない、学ぶことは楽しい
ここでもう一度、はじめに戻って「原稿を読む」ということについて考えてみます。
シリーズ1では動作について分解して考えてみましたが、今回は別の部分に注目します。
今回注目するのは、読みや表現ではありません。
動作でない部分に注目します。
そう。これまでたくさんの方が気にされているに違いないこと。
原稿を読んでいるときの「姿勢」です。
姿勢については、養成所や事務所のレッスンでは基礎の内容として習うことが多いですよね。
それだけに、大切なものだと思いがち。
皆さんと同じく、私も養成所や事務所のレッスンでは口うるさいほどに姿勢のことは注意されました。
「背筋を伸ばして!」
「腰を入れる!」
「仙骨を立てる!」
「胸を開く!」
注意される度、「うーん、まだ基礎的なことができていないのか・・・」と落ち込むこともしばしば。
特に練習に真面目に取り組んできた人には、原稿を読むときの型があると思います。
意識している人もいれば、意識していない人もいると思うのですが、
実は多かれ少なかれ、「原稿を読む」というアクションを実行するにあたって、そのアクションをスタートのための土台になるための姿勢が存在しているのです。
その姿勢には間違いも正解も存在しません。
自分のこれまでのレッスンや本番での経験を元に形成された物差しが独自に作り上げたひとつの型です。
いつもとは違う体勢で原稿を読んでいると、なんだか違和感を感じることはありませんか?
あなたの身体が、あなたが慣れ親しんだ姿勢と現在の姿勢を比較して、一致しないとき、違和感が訪れるのです。
もしその姿勢が、原稿を読むにあたって呼吸や発生の機能をこれまでよりも有効に使うことができる姿勢であっても、違和感はやってきます。
私たち人間は違和感を嫌うようにプログラムされていますから、
違和感=間違い、と判断してしまうのです。
読むときのベストな姿勢は?
原稿を読むときの姿勢で皆さんが一番気にするのはどんなことでしょうか?
背筋を伸ばすとか胸を張るとか、いろんなことを主張される講師の方々もおられます。
皆さん、信じていることが異なるので、教わる側は何を信じて良いかわからず、混乱するばかり。
さて、カラダトリセツ的な答えはというと・・・
「好きな姿勢で読めば良い!」
です。
姿勢に正解はありません。
自分がやりたい読みができるように原稿を読めるのであれば、どんな姿勢だって良いと思います。
猫背であっても、右に傾いていても、寝転んでいても、逆立ちしていても・・・
あとの2つはスタジオやブースでやるのはどうかと思いますが・・・(笑)
自分が「こんな姿勢で読んでいる」ということに気づいているのであれば、本当にどんな姿勢で読んでも良いです。
やりたいことをやる時が、モチベーションが最大限に発揮されるときですから。
でも・・・、姿勢に正解や間違いはありませんが、
その姿勢が発声器官や呼吸器官に影響を与えることはあります。
もちろん、姿勢によっては良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることがあります。
その影響を知った上でなら、どんな姿勢でも読んでいいと思うのです。
例えば原稿を読むとき、足はどうなっている?
原稿を読むときの姿勢がどんな影響を与えるかを知るには、姿勢を解体してみましょう。
例えば、原稿を読むときに椅子に座るとします。
もし、このブログを読みながら椅子に座ることができる方は
椅子に座ってみてください。
椅子がない環境にいる方は、自分が椅子に座ったところを想像してみてください。
さて、これから原稿を読むとして、姿勢を気にするとしたら、どこに注意を払いますか?
背骨とか、胸とか、腰が多いのではないでしょうか?
いえいえ、それ以外の箇所にももっと注意を払ってください。
例えば、足とか。
原稿を読むときに足なんて関係ないじゃないか!
と思われるかもしれませんが、足の曲げ伸ばしには腸腰筋が大きく関係しますから、発声にも影響を与えます。
特に足が緊張していると、腸腰筋にも余計な負荷がかかり、響きを損ないます。
例えば、腕とか。
原稿を持ったり、デスクの上に載せている腕にも余計な力が入っていませんか?
腕は鎖骨から始まっています。
鎖骨の下には肺があります。
ということは、腕に余計な力が入っていて、あまり動かないように固定されていると、肺の上側への膨らみを邪魔することになります。
呼吸に影響を与えるわけですから、当然、発声にも影響を与えます。
ありもしない「正しい姿勢」に惑わされないために
原稿を読んだり、セリフを言うときの姿勢に、正しい姿勢も間違った姿勢もありません。
特に役者のセリフだと、シーンに応じてカラダの動きも変わります。
仮に正しい姿勢が存在するとして、その姿勢でセリフを言うことはできないですよね?
好きな姿勢、自分が必要だと思う姿勢で読めば良いんです。
ただ、その姿勢が発声や読みに影響を与えるということは知っておいてください。
先ほどの足や腕のように、自分のカラダをどのように使うかで、
声はものすごく変わります。
自分の声をもっと良くしたい!
もっと楽に声を出したい!
そう思う方は、読んでいる時の状況を観察してみてください。
「今ここはこんな風に働いているけど、それは必要なのかなー?」と考えてみてください。
それだけで意識が向くようになり、だんだんとセンサーが働くようになり
不要な緊張に気づくことができるようになります。
ちなみに、このセンサーを活性化させる練習、ナレーションやセリフの練習をしないと鍛えられないわけではありません。
電車やスタジオまでの移動時間や家でゴロゴロとマンガを読んでいるときでも鍛えることができちゃいます。
大きな変化や成長は、日々の小さな一歩の積み重ね、ですね。