こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
マスク越しでの会話が日常的になった今、マスクで声がこもってしまって、会話をしていても聞き返されることが増え、不自由に感じていませんか?
特に接客業や営業の方など、コミュニケーションをとることが大切なお仕事をされている方は、声が届かないことで業務がスムーズに進まなかったり、ときにはクレームにつながってしまったりと、仕事に支障が出てしまってもどかしい思いをされている方もいらっしゃると思います。
この記事では、マスク越し、アクリルパネル越しの声についてのこと、そして特別な訓練や練習をしなくても、明日からすぐに試せる「より相手に届く声」を出すためのアイディアをご紹介します!
・マスク越しの会話が聞こえにくい理由
・よくある「良い声の出し方」はカラダと声にとっては必要ない
・マスク越しでも届く声になるために必要なこと
マスク越しの会話では何が起きている?
「マスクをしているから聞き返されるのも仕方がない」と、不自由を感じているのに諦めていませんか。
まずは、自分の声のことと、マスクをしている時に起きていることを整理して考えてみましょう。
あなたの声は、空気の振動で相手に届いています。
会話をしているはもちろん、発声をしているとき、人は自分の声を2つの方法で聞いています。
空気が振動して耳まで届く「気導音」と、骨が振動して届く「骨導音」です。
しかし、相手が受け取るのは「気導音」だけ。
骨が振動して直接届く「骨導音」は、自分にしか聞こえていません。
話している時に「自分の声」だと感じている声は、実は相手には半分届いていない、ということですね。
自分自身の声が聞こえているからしっかり声が出ている、と感じていても、「気導音」のみを受け取る相手には、自分が感じているほど声は届いていません。
声が空気の振動で相手に伝わるのであれば、自分と相手の間の空気を遮るものがあると届きづらくなるのは当然のことですよね。
マスクをしている時は自分と相手との間の空気を遮って、空気の振動を減衰させてしまっています。
「気導音」がマスクやアクリルパネルというフィルターを通して半分の大きさになってしまうので、声を届けるのが難しくなっているということですね。
マスク越しでもこれをすればOKは本当?
マスク越しの会話がスタンダードになった今、接客業をはじめ、声を使う職業をしている多く方が、業務中に多くの不便を感じています。
そんな中、会社で行われる研修やインターネット上にある記事などで、こんな「声の出し方」関する方法に触れる機会が多くなったのではないでしょうか。
「腹式呼吸で話そう」
「声のトーンをあげてみよう」
「(マスクで見えなくても)口角をあげて話してみよう」
どれも、よく聞く声の改善策ですよね。
しかしこれ、正しいアプローチなのでしょうか?
ここからは、よく用いられるこの3つについて、少し詳しくみていきましょう。
「腹式呼吸で話す」は本当?
「腹式呼吸」は、声や息を使う仕事をしている人なら必ず一度は耳にしたことがある、と言っても過言ではない、一般的によく用いられるアプローチです。
しかし私は、腹式呼吸が不要である、と考えています。
以前書いた記事に、理由を詳しく書いていますので、ぜひこちらを読んでください。
≫ まだ「腹式呼吸」って検索してるの? - 発声時に特別な呼吸があると信じている人へ
「腹式呼吸をしてください」という言葉には、「たくさん息を吸って、大きな声を出す」というニュアンスが含まれています。
しかし、人との会話の中で、特別たくさん息を使ったりする必要はありません。
むしろ、腹式呼吸を意識しようと息を使いすぎると、大きな声が出たとしても、相手に威圧的な印象を与えてしまいます。
突然、相手が必要以上に大きな声で話しかけてきたら、少しこわいですよね。
そもそも発声は、普段から行っていること。
マスク越しで会話をするからといって、普段通りに声を出すときと全く違う呼吸の仕方をするのは良い選択ではありません。
「トーンを上げて話す」は本当?
女性の「高い声」のことを、「よく通る声」だと言ったりするように、高いトーンの声は、相手に届きやすいイメージがあります。
たしかに周りより高い声だと、よく聞こえますよね。
しかし、「トーンをあげろ」と言われて、普段よりも高い声を無理してだそうとしていませんか?
無理をして高い声を出そうとすると、喉を締め付けてしまいます。
これを毎日続けていると、喉を締め付けることが習慣化してしまい、声が出しづらくなってしまいます。
せっかく相手に声を届けたくて実践しても、長期的にみて声に悪影響がでてしまっては本末転倒ですよね。
「口角を上げて話す」は本当?
マスクをして会話をするのが日常的になってから、「マスクで隠れて見えていなくても意識して口角をあげよう!」といったアプローチをよく見かけるようになりました。
しかし、口角をあげた状態をキープしながら話をするのって、結構難しいですよね。
無理して口角をあげようとすると、表情筋に無理な緊張を強いることになってしまいます。
表情筋が無理な緊張を続けていると、他の筋肉も緊張したり、バランスが崩れてしまったりして、結果的にカラダが「動きづらい」状態につながりやすくなります。
過度に意識して口角をあげることが、カラダを適切に動けなくさせてしまうのです。
この状態が続くと、話しづらくなってしまったり、うまく表情筋が動かせず滑舌が悪くなってしまったりと、色々な弊害が出てしまいます。
自然に口角があがるのではなく、意識して無理に口角をあげることは、不自然な緊張を体に与え、結果的にカラダや声によくない状況を作ってしまうのです。
マスク越しでも相手に届く声になるために必要なこと
では、マスク越しでも相手に届く声になるためには、どんなことをすればいいのでしょうか。
キーワードは、「距離を意識すること」そして「伝えること」です。
まずは、自分の口から相手までの距離を意識してみてください。そしてその間に、あなたの声を遮るものがないか確認してみましょう。
マスクやアクリルパネルなど、どのくらいの距離にあるのかも観察してみてください。
それらを踏まえて、どのくらいのボリュームで声を出せば相手に届くかを考えてみます。
どのくらいの息の量で、どのくらいの速さで声を出せば、ちょうど相手に届くのかを想像して声を出してみましょう。
実際に声を出し、吐き出す息の量と速さを変えて実験をしながら、マスクやアクリル板があっても相手に届く、「ちょうどいい」息の量と速さを探してみてください。
見つかったら、その「ちょうどいい」息の量と速さを意識的に実践し続けてみましょう。
習慣的にいつもどおり行うのではなく、話し始める前に「ちょうどいい息の量と速さ」を毎回確認し、意識して選んで発声してみてください。
相手までの距離を想像して、障害物を踏まえて意識するだけで、息を過度にたくさん吸ったり、声をわざと高くしたりしなくても、しっかりと相手に届く声を出すことができます。
そして、あなたにとって「ちょうどいい息の量と速さ」で出した声で、相手に何を伝えたいのか、何を届けたいのかを明確に考えてみましょう。
相手に声を届けること自体が目的ではありません。
あなたが相手に伝えたいことや意図を、相手にきちんと届けるために声を使います。
普段の会話の中でも、ちょっと言いたくないことや言いづらいことを言わなければならない時、声が自然と小さくなってしまったりしませんか?
あなたの思いや考えは、自然に声に現れてしまいます。
結果的に相手にどうなってもらいたいのか、何をしてほしいのか?
明確であればあるほど、相手はあなたの声からたくさんのメッセージを受け取ってくれます。
伝えたいこと、届けたいことを明確にしてから離すことを心掛けてみると、自然と相手に声は届きますよ。
まとめ
マスク越しで声がこもらないようにするためには、まずやらなくていいこと(やってはいけないこと)と、必要なことを理解することが大切です。
「よく言われているから」「みんながそうしろというから」と、やらなくていいことをやり続けてしまうと、一向に発声が改善しないばかりか、様々な弊害が現れてくることもあります。
既存の考えにとらわれず、まずは、相手と自分との間の距離とその間の障害物を確認して意識すること、そして自分が相手に伝えたいことを明確にすることから始めてみましょう。
これなら練習もいりませんし、明日のお仕事から試せそうですよね。
実験しながら、あなたの「ちょうどいい息の量と速さ」を見つけてくださいね。
この記事で紹介した方法を意識したうえで、さらによりよい呼吸に変えることができれば、もっと相手に届けやすくなります。
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