こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
こないだ部屋を整理していたら、懐かしいこんなのがありました。
その名も「滑舌メモ」(笑)
随分前の話ですが、私は声優のトレーニングをしていたことがあります。泣く子も黙る厳しさで業界では有名な学校でして、そのスクールでの授業には滑舌のクラスがありました。いわゆる早口言葉のような、言いづらい言葉をスラスラ言えるように、舌のトレーニングをするわけです。
その中の一つはこんなの。
十種競技優秀賞受賞者は電車操車場出身の車掌で俊足選手。電車操作所出身の社長も優秀な俊足選手。車掌と社長は双子の姉妹で優秀で俊敏な俊足選手。
これを3回繰り返すんですけど、メモにはその間のブレスは2,3回で、と書いてある。
で、久し振りにやってみた。
い、言えない・・・(笑)
当時は躍起になって練習してましたよ。それはもう、レッスンで褒められたい一心で。失敗したくないもんだから、カラダをガチガチにしながら必死になって言おうとしてたんだと思います。
振り返ってみると、できないよりはできたほうがいいことではあるけれど、本当に必要だったのかなぁと思うわけですよ。そして当時は「必要か必要でないかを自分で考える」ことはしなかったなぁと思うわけです。
当時は先生に言われたことをただやるだけで、自分で考えることはなかったなぁと。。。
まぁ習いたての頃なんてそんなもんですよね。
声のトリセツを読んでくださっている方の中には、声優やナレーターの勉強をしている方も多いので、今回は舌の動きについて考えてみることにします。
そんで、これから先の学び方を考えていただくきっかけになればいいなと思います。
声と舌の関係
まずはじめに明らかにして置いて欲しいことがあります。
それは、声と舌の関係性について。
声を出す上で、舌はどのような役割をしているかということ。
あなたはどんな風に考えていますか?
私は、舌は音を構築するための一つの要素にしか過ぎないと考えています。
つまり、舌の動き=声をという関係でもないし、舌が声をつくるための絶対的な要素ではない、と考えているのです。
たとえば、母音である「あ・い・う・え・お」という音を出すときには舌はほとんど動きません。それ以外の「か・き・く・け・こ」とか「さ・し・す・せ・そ」のように、子音+母音で構成される音を出すときには舌は動きます。もちろん舌の他にも動いている部分はあります。
あなたも試しに「か・き・く・け・こ」とか「さ・し・す・せ・そ」とか音を出してみてください。
何度か音を出しているうちに、舌が動いていることに気がつくと思います。それと同時に、下あごも開いたり閉じたりしていますよね。
こんな風に、いくつもの音をつくるための役割を持った私たちのカラダの部分(顎とね)が役割を果たすことで、音はつくられています。
だから舌が声をつくる上での絶対的な要素ではない、と私は考えているのです。
ちなみに、気づいているかもしれませんが、私は「声」と「音」を使い分けていますからね。音は「あ」とか「い」とかそれぞれひとつの要素、これらの要素が何らかの意図を持って組み合わせて発せられるものを声だと考えています。
舌のトレーニングは重要か?
レッスンやワークショップで舌のトレーニング方法を習ったことってありますか?
私はこんな方法を習ったことがあります。
まず舌で右の上の奥歯にタッチします。
そこから、舌を、右の下の奥歯→左の下の奥歯→左の上の奥歯、また右の上の奥歯というようにクルクル回すようなトレーニングです。これをある程度繰り返したら、今度は逆回りでまた繰り返します。
また「た・ら・な・か・が」と言う音を繰り返す練習も教わりました。
こうやって舌の動きを繰り返して、筋肉を鍛えるわけですが、これって本当に効果があるのでしょうか???
確かに、舌の筋肉が鍛えらると、音がハッキリくっきり明確になることもあるでしょう。でも、さっきも紹介したように、声をつくる要素は舌の動きだけじゃないんです。そして舌の動きをめっちゃ鍛えて、ずば抜けた能力を身につけたとしても、それはあまりメリットがないのです。
レーダーチャートにするとこんな感じ。
パワプロみたい。
こんな選手、スタメンで起用します?ここぞという時の、めっちゃ限定されたときのシチュエーションでしか使わないでしょ?
しかも声について、滑舌命の状況、一年で何回ありますか???
良い声をつくるために必要な要素がたくさんあるなら、どこかのパラメーターに特化するのではなくて、少しずつでもいいので全体を底上げしていった方が良いわけです。
だって、声って毎日使うでしょ???
ちなみに、レーダーチャートの滑舌以外の要素が気になった方は多いと思います。メール講座を読んでくれている方ならわかりますよね。詳しく解説が必要な方はLINE@から質問してください。
滑舌の練習ってやりたくてやってるの???
例えばですが、さっき紹介した舌を上下左右の奥歯にタッチしていくトレーニングや「た・ら・な・か・が」を繰り返す練習に励んでたとします。早口言葉の様な滑舌の練習でもいいです。
どんな練習であってもしばらく続けると舌が疲れてきます。舌も筋肉ですから、使い続けると疲れてくるのは当然です。真面目な方は少し練習して疲れてくると「あぁ、練習が足りないな・・・」とか考えはじめてしまいます。
実はその時、自己否定スパイラルの入口に立って、足を踏み入れようとしてしまっているんですね。
「練習が足りない」→「自分の努力が足りない」→「自分はダメだ」→「他の人はもっと練習している」→「すぐ疲れるのは練習が足りないから」→「自分はダメだ」→以下、無限ループ。
そんな出口のない旅をしている時に養成所や事務所の先生にダメ出しされるともうおしまい。それがどんな小さな指摘であっても、奈落に向けてフリーフォールです。
普段なら平然と受け入れられることでも、メンタルが弱っているときにちょっとしたダメ出しを受けると崖で背中を押してくれたような感じになります。もちろん先生はそれを意図してはいませんけどね。
滑舌に限らず、練習とかでこのループに入っていると思ったあなた、もしくは入りそうだったあなた。
そこから先に進む前に、一つだけ考えてみてください。
練習していて疲れる理由について。
「練習が足りない」というそんなアバウトなことよりも、あなたに疲れが訪れる理由があるんです。
そう!
滑舌の練習は全然面白くない!!
そりゃそうですよ。あなたが滑舌の練習に取り組んでるのって、自分の意思ですか?先生や先輩から、やれとかやった方が良いよと言われたからじゃないですか?外部からの影響によって生まれるモチベーションは、すぐになくなります。
モチベーションというものは、あなたが本当に取り組みたいと思ったときに勝手に溢れてきます。あなたが、滑舌の練習が面白くないと感じているのは、今はまだ心の底から「取り組みたい!」と思っていないからではないでしょうか?
あなたにとって、滑舌練習よりも大事なことがあるのです。それにあなた自身が気づいていない可能性があります。自己否定の無限ループに入る前に、改めてアナタ自身にとって大切なものを考えてみてください。
滑舌の練習より大切なこと
数年前に、たくさんのプロナレーター声を録音してきた方にも「滑舌って武器になるっと思ってるの?」って言われたことがあります。
はい、そう思ってました・・・。クッキリ・ハッキリとした滑舌は武器になると思っていました(涙)
でも今ではそう思いません。滑舌はどんなに鍛えても武器にはならない。
実際、あなたは「この人の滑舌、好きなんだよね〜」っていう人いますか?
私も声の話をいろんな方としますけど、「あの人の声、好きなんだよね〜」って聞いたことがあっても「あの人の滑舌、キレイで好きなんだよね〜」っていうことを聞いたことは私はありません。それどころかちょっと舌っ足らずなほうが可愛いという印象を与えるケースもあります。
それでも滑舌が武器になると信じて疑わず、舌のトレーニングや滑舌の練習にこだわる方に、フレデリック・フースラー著『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』からの引用をご紹介します。
舌は喉頭に対してどのような援助も果たすことができないし、舌は単に語音作成のための共同作成者に過ぎない。
さっき、パワプロみたいなチャートを紹介しましたよね?
あくまで舌は声をつくるための一つの要素でしかないのです。
さて、ここまで読み進めてくれたあなたに質問です。
もし、あなたがこれまで毎日2時間使って舌のトレーニングをしていたとしたら、これからはその2時間をどんな風に使いますか?
映画見たり舞台見に行ったり、他にも学びたいことありませんか???
もっとレッスン受けたりしたくありませんか???
美味しいもの食べたり、好きな人とデートしたり、したくありませんか???
つまり、時間の使い方はあなたが選ぶことができるわけです。
まとめ 正しい舌の使い方なんて存在しないから安心しよう
フースラーの「うたうこと」には、こうも書かれています。
舌というものは、自然に正しく「ふるまう」ものなのだ−。さらに付け加えれば、舌が神経支配の悪いどれかの喉頭筋に対する、誤った(非生理学的な)協力相手として、間違って使われなければならないというようなことがないかぎりは、舌がどうこうするということはまったくないのだ。
ここで言う「正しい」、「誤り」は教科書にそったマルバツではありません。声のトリセツを読んでくれているあなた方ならもう知っていますよね。
解剖学や生理学においての「正しい」、「誤り」ということです。具体的には、人間が持って生まれた構造などに従っているか、また本来の機能に添っているかどうかという意味での「正しい」、「誤り」です。
もし、ここで言う「誤り」があなたのカラダに起きているとしたら、それは痛みというシグナルが教えてくれるはず。正しい舌の使い方が存在しないのであれば、わざわざ練習しなくてもいいんじゃないかと思うのです。
そして私は滑舌の練習に特化するくらいなら、発声についての全てのパラメーターを少しずつ一緒に引き上げていく方を選びます。
あぁ・・・若かりし日の自分に教えてやりたい(笑)
アナタはどう思いますか?
アナタは何を大切にして練習に取り組みましょうね?
今回の内容を通じて、あなたが、あなた自身に必要なものを選択することができるためのヒントになれば嬉しいです。
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