台本や原稿を読んだとき、「なんだかつまらない」とか「予定調和だね」とか
「何となく予想できる読みだね」のようなダメ出しを受けたことはありませんか?
(私もしょっちゅう指摘されます…汗)
今回はここからさらに一歩踏み込んだ、「展開させる読み」に行くためのポイントについて考えてみましょう。
台本や原稿を読んだ時にあなたが持っている意見。それは解釈です。
悲しいお話だな、楽しいお話だな、とか原稿を読んだ時点での印象です。
その印象をもとに、ここはこんな雰囲気かなとか、こんな風に読もうとか、あらかじめプランしたとおりにパフォーマンスする。
このレベルに到達するまでの道のりも大変ですが、パフォーマーとしてはこの一歩先に進みたいところ。
多くの方々が、ここまではたどり着いたとしてもここから先になかなか進めない、壁を破れなくて悩んでいる方も多いと思います。
解釈したとおりにパフォーマンスすると、予定調和と言われたりします。
プランしたとおりのパフォーマンスですから、決まった場所に着地するわけです。
まとまってはいるんだけど、イマイチ飛び抜けていない、当たり障りのない、そんなパフォーマンスになります。
これは原稿や台本を読みながら、プラン通りのパフォーマンスができるように、無意識のうちに身体をコントロールしているからです。
ここからもう一歩先に「展開」させるためには、「空気」を感じる必要があります。
ここでいう「空気」とは、パフォーマンス中の空気感のこと。
他の役者・声優との掛け合いで生まれる空気感、映像・原稿とナレーターの間の空気感です。
例えば、日常で誰かと話しているときを思い出してみてください。
あることについて会話をしているとします。
でも、友人と楽しく会話しながらも、別のことについて考えていたりすることはありませんか?
また、会話の中から新しいトピックが見つかり、それについての話題に変えたり。
私たちは会話しながらもいろんなことを考えています。
台本や映像の中の登場人物も、同じです。
あなたも、台本や原稿を読みながらいろんなことを感じるでしょう。
ここに展開させるためのヒントがあります。
解釈したとおりにパフォーマンスすることは、
読みながら感じたことを全て無視し、あらかじめ予定した場所に向かうパフォーマンス。
何度読んでも同じような読みに収束します。
ですが、本来、パフォーマンスは毎回同じ結果になるはずがありません。
それは空気感が影響しているから。
以前、ココロとカラダは密接に繋がっているというお話をしました。
カラダで受けた刺激はココロに、ココロで受けた刺激はカラダに現れる、ということです。
相手役のセリフであったり行動であったり、映像であったり原稿の内容であったり、
パフォーマンス中はいろんな刺激を受けます。
その刺激が、あなたのココロやカラダに変化をもたらします。
それがどんなものかは分かりません。
あなたが今までにしたことのない表現かもしれません。
稽古中には出したくても出せないセリフ回しだったかもしれません。
もしくは稽古中に思いも寄らなかったことかもしれません。
私は、この変化が展開させるためのキーだと思います。
変化そのものが展開かもしれません。
よく「ゾーンに入っている」とか言われるのもこのことじゃないかと思うのです。
ですが、これがなかなか難しい。
頭では分かっても行動できない、一歩を踏み出せないんですよね。
実はそれ、生物が本来持っている防衛本能なんです。
生物は未知に対して恐怖を感じます。
行ったことがない場所、到達したことのない領域に憧れる一方で、何が起こるか分からないリスクから身を守ろうとするのです。
知らず知らずのうちに働いた防衛本能が、予定調和の読みに収束させるのです。
パフォーマーが未知の領域に行くためには、恐怖を乗り越える必要があるのです。
私も今までにしたことのない読みを初めて体験したときは怖かったです。
スクールバーズのCMセミナーに通っていたときに体験したのですが、
講師の鈴木省吾さんに「どうだった?」と聞かれ
「自分がどう読むのか分からなくて怖かったです」と答えました(汗)
恐怖を乗り越えるというとなんだか大ごとのようですが、
言い換えると「原稿や台本を読んでいる最中にあなたに訪れる変化に身を任せましょう」ということです。
あなたは原稿や台本をコントロールしようとする必要はありません。
ディレクターや脚本家が愛情をもって作った原稿や台本から受ける刺激に身を任せてパフォーマンスすればいいのです。
そうすると、今までとは違った「展開」が待っているでしょう。