こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
今回は「練習」というテーマについて考えてみましょう。
アナタは「練習」についてどんなイメージを持っていますか?
声についてのことはもちろん、演技や楽器の演奏、スポーツなどにおいても上達するには欠かせないものですよね。
例えば、大きな声を出すと喉が疲れる、人前では緊張して声を出しづらい、というようにアナタは声についての悩みや望みがあったら、そのためには練習に取り組むことをすすめる人が多いでしょう。教わっている先生から言われたので、毎日発声練習にとり組んでいる方もいると思うんですが・・・、ぶっちゃけ楽しいですか?
今回は、発声練習に代表される楽しくない練習をいかにして楽しく取り組めるようにするか、継続できるように心の底から練習したいと思うように変換する方法について紹介します。
声のことだけではなく、仕事やスポーツ、その他のことにも応用できると思いますのでぜひ試してみてください。
練習はつまらん!楽しくない!
私も、かつてはボイトレの本で読んだ発声練習やレッスンで先生に教わった練習に熱心に取り組んでいたことがありました。長いこと続けました。来る日も来る日も「あえいうえおあお」、毎日毎日「あえいうえおあお」。気持ちを変えて「拙者、親方と申すは・・・」と外郎売りをやってみたり・・・。
数年続けた後、止めました。もう続きませんでした。モチベーションもありません。自分のふがいなさを責めました。
でもね、続かないのには理由があるんです!!
正直、全く楽しくなかったからです。
楽しくなければ続かないのは当たり前!そんな練習はやるだけ時間の無駄!だって、楽しくないってことは心の底でやりたくないと思ってるわけでしょ?それを無理にやるってどんな苦行ですか?「将来のために今辛い思いをして・・・」なんてもう古い!!
もしアナタが、苦行を乗り越えないと成功にたどりつくことはできないとか考えているなら今すぐ考え直しましょう。その思考回路をアップデートしましょう!!
WindowsやMacのOSのようにアップデートするのです。
そもそも練習とは何なのか?
「練習」というものを改めて考え直すよために、いつものように意味を調べてみましょう。
技能・芸事などが上達するように同じことを繰り返しならうこと。
- 大辞林 第三版 より
意味はご存じの通り。アナタが想像しているとおりの内容で、特に何の変哲もありません。
私としては、こっちの方を知って欲しいと思います。
学習を行うために繰り返し行う操作のこと。刺激(stimulus)と反応(response)の結合に関して,1910年アメリカの心理学者E.L.ソーンダイクは二つの性質を見いだした。その一つは,ある刺激に対してある反応が起こるとき,それが繰り返されると刺激と反応の結合が強められるというもので,このとき繰り返される操作を練習と呼ぶ。また第2の性質は,これが繰り返されないときは刺激と反応の結合が弱められる。すなわち,練習しないときは刺激―反応の結合は弱められる,というものである。
- 世界大百科事典 第2版 より
科学的に考えると、刺激と反応の結合を強めるというものです。何度も同じ事を繰り返すことで、ある特定の刺激が来たときに、特定の反応をするための伝達がより早くなり精密になるといようなものです。(特別な言葉で「髄鞘化」という言葉があります。)
プロスポーツ選手が何度も何度も反復練習に取り組んでいるのはそのためです。
ただ、満足感を得たり、疲労感を味わうことが練習の目的ではありません。
仮に、アナタにできないことがあったとしたら、それはアナタの才能の無さや努力不足なのではありません。ただ、ある特定の刺激とそれへの反応の結びつきが、弱いだけ。もしくは今まで望んだとおりの反応をしていなかったか、だけのお話です。
だから自分を否定することや、自分のあら探しをすることが練習ではありません。
ここから先を読み進めて行くにあたっては、まず「練習」についてアナタがこれまでに思っていたものとは異なるものであると考えるようにしてください。
それにしても、指導者はすぐに生徒の努力不足にしたがるんですよね。その方が責任を生徒に押しつけられるから楽チンなんでしょうけど・・・。どうしたもんか・・・。
練習に必要な要素
それでは、練習というものをこれから取り組んで行くにあたって、必要なものを見ていきましょう。
全ては「望み」から始まる
なんといっても必要なのは「望み」です。何がしたいのか?どうなりたいか?それがないことには始まりません。
例えば、声のトリセツを読んでくださっているアナタならきっと望みを持っているはず!
・良い声になりたい!
・疲れない声になりたい!
・人前で堂々と話ができるようになりたい!
・女の子にモテたい!
・男の子にモテたい!
などなど、とにかくどんなことでも良いので、アナタが心から望んでいる願望、wish、望みが必要なのです。
望みがないままだと練習は長続きしません。そんな人は「先生に言われたから」「友人が勧めているから」「本に書かれていたから」という理由で練習に取り組んでいるので、自分の意思で練習をしていないのです。練習が続かないのにはワケがある!!
刺激と反応について考える
次は「刺激」と「反応」について考えてみましょう。
といってもなかなか難しいですよね。
別の言葉を用いて、分かりやすく解説してみたいと思います。
私たちが練習に取り組むとき、下記の条件が当てはまるでしょう。
・何かできるようになりたいことがある
・でも今はできていない
声のことに限らず、楽器やスポーツなどあらゆることについても同じ事が当てはまると思います。
多くの場合はこんな風に「今できないこと」という風に考えてしまって、練習という名のあら探しや自分へのダメ出し大会をしてしまう傾向にあります。真面目な人であればあるほどね。最悪の場合はそこから自己否定モードに突入してしまうことに・・・。そうなったら、なかなか浮上のきっかけをつかめません。
ここで、できること・できないことについての考えを変えてみましょう。
できるようになりたいことがあったとして、でも実際にはそれができていないわけですよね。多くの場合は「できない」と表現してしまうのですが、でもその代わりに何らかのことをやっているはずです。
例えばカラオケや歌を歌うシチュエーションで具体的な例を挙げるとするなら・・・
この曲のサビの部分は高めのオクターブの音で歌いたいけど、それができない。
→実際は、それよりも半音低い音で歌ってしまう。
こんな風に、「望みどおりのオクターブの声で歌うことはできていない」けれども、「望みどおりのオクターブより半音低い音で歌うことはできている」ということなのです。
私たちはどうしても「できていないこと」に目を奪われがちで、今できていることに目を向けようとはしません。それだけ否定形表現の力は強いんですね。そして否定形表現には心を傷つける力も持っていますから取り扱いは慎重にしたいですね。
さて、このできていることを「反応」と考えるならば、サビの部分を歌おうという刺激に対しての反応が行われているわけです。
そして、アナタには「今の反応よりも半音高いオクターブで反応したい」という望みがあるわけですよね。
今アナタがやっている反応を変えるためには、何が必要でしょうか???
今の反応が特定の刺激に結びついているのであれば、アナタの望みどおりの反応ができるような別の刺激を見つけてあげれば良いのです。
言葉で言うと簡単なのですが、これが難しいんですよね。なかなか思うように行かない。というか、どうすれば良いかはわからないのです。こればかりは、探求するしかありません。しかしながら、一向に何も見つからないので練習することに意味を見いだせなくなってしまうのです。
実はこれが練習の最初の段階です。今までとは異なる刺激によって望みどおりの反応をすることができるようになるために、いろんな実験を繰り返していくことこそが練習なのです。
多くの方が考えている練習とは、ただの反復するだけ。できないことをできるようになるまでただ反復するだけ。当然、長続きしませんし、あまり役に立ちません。でも実際に私たちに必要なのは、望みどおりの反応をするための刺激を探すことなのです。
実験の繰り返しは、まさに研究者が日々取り組んでいるようなこと。今わかっている事実をベースにして、一つの仮説を立てる。それが本当かを確認するために実験をする。実験の結果、それが望んでいるものでないなら、またその時点での事実をベースに次の仮説を立てる。そしてまた実験して・・・
これこそが練習の本来の姿だと、私は考えています。
でも多くの方は、実験の結果をもとに、自分のことを否定します。できないことやあら探しをします。そして次の実験をして、またあら探しして・・・ということばかり繰り返しているのです。そりゃ長続きしませんよね。
そろそろ「楽しい練習」のやり方を教えてくれるスクールとかがあってもいいと思うんですけどね。ま、ないから私がつくろうとしてるんですけどね。全てとは言いませんけど、ほとんどのスクールが生徒を否定してお金をもらっているわけですから。アナタも思い当たるスクールあるでしょ?
疲れたら休む
そして3つめの大切なポイント。「疲れたら休む」です。
バブルの頃からの悪しき伝統なのか、今でも「寝る間も惜しんで働く、努力する」ことが美学だと考えている方が多いです。「24時間戦えますか?」というフレーズがかつて大流行しましたが、24時間戦うなんて正気の沙汰ではないと思います。
アナタの周りにもいません?「今の若者は・・・」っていう人。
だって、その人もアナタも私も、実際には「今」に生きているんですよ。安易に「今の若者は・・・」って言う人は、ご自身の思い出や体験の中でずっと生きているのでしょう。そうやって、いつまでありもしない「精神論」を振りかざすんでしょうねぇ・・・。私はそちら側には行きたくないのでこの辺りでやめときましょう。
で、私が言いたいのは「疲れたら休む」ということ。
アナタが疲れを感じているのは、アナタが怠けたいからではありません。アナタのカラダが「休みなさいよー」ってアナタにメッセージを出しているのです。だから、疲れたならできる限り休むにした方がカラダにも精神衛生上にも良いことなのです。
練習していて疲れたな・・・と感じたら、素直に休むようにしましょう。
特に発声というのは、心と耳と筋肉と発声器官の連携技でもあり、カラダの全てを使う全身運動ですから疲れるのは当然です。
成長プロセス
練習が続かないなら、練習における成長という観点も考えておきましょう。
多くの方にとって、成長とはこんなイメージではないでしょうか?
時間の経過と共にスキルが上がっていく、つまり練習すればするほどうまくなる、と考えられています。
ところがどっこい、この図は大きな嘘が隠されています。
挫折や停滞(伸び悩み)、壁にぶつかるということが描かれていないのです!!
こんな成長線を描けるのはそれこそスーパーヒーローだけでしょう。漫画の主人公でさえ、強敵の出現に挫折や壁にぶち当たる経験をしています。
そして成長線の上に立ってみると・・・
ひえ〜〜っ!!
とんでもない上り坂!!
多くの人が、成長することは過酷なこと、辛いことであるかのように考えている理由も頷けます。
でも本当の成長とは、こんな風に表すことができると思うのです。
こんな風に、時間が経って少しレベルアップして、また時間が経って少しレベルアップして・・・この積み重ねです。
さて、この成長線の上に立ってみると・・・
ほーら、平坦な道。段差も乗り越えられそうですよね。
練習を通じてうまくなること、成長することについて、もし上り坂と考えているなら、そんな苦行のような考えは捨ててしまいましょう!
私たちはこんな風に平坦な道を進んでいて、たまにちょっと手を伸ばせば一段上がることができるのです!!
練習を長続きさせるコツ
最後に、私が考える練習を長続きさせるためのコツを紹介しますね。
毎日 5〜15分でいいから時間をつくる
「練習をしなきゃ」と思っている方の中には、1時間とか2時間以上取り組まなければ練習をしたという気がしない人がいるかもしれません。それは練習と言うよりノルマです。練習の質に関係なく、これだけの時間取り組んだということに対する満足感を得ているだけのものとも言えるでしょう。
例えば、陸上競技とか、水泳とかタイムを競う競技において、今までよりも好タイムが出てしかも疲労感もそんなにないという望ましい結果が出たときに、「いや、疲れていないのは何かおかしいはずだ。これじゃ、やった気がしない」みたいに、達成感や自己満足のためのものに近いのではないでしょうか?
練習の目的が変わっていますよね。
私は練習をするなら一日5〜15分で十分だと考えています。毎日少しずつ取り組むことで小さな変化を摘み続けていくことが大切なのです。
どうしても私たちは目に見えた大きな変化を好む傾向にあって、それを期待してしまうのですが、そんなのはほとんどありません。変化は小さな出来事の積み重ねの結果ですからね。
そして「もうちょっと練習したいな」というところでやめておくのがちょうど良い。もう少し取り組みたいという次の日の練習へのモチベーションになるのです。
できるかぎり朝
その時間を取るのはできる限り朝が良いでしょう。夕方や夜に練習するのも良いですが、一日の後半は不確定要素が多すぎます。仕事の疲れが残っていたり、友人からの急なお誘い、見たいテレビがある、ドラクエやりたい、というようにその日の日中の出来事によってどんな気分になるか、どんな状況になるかはわかりません。
だから、一日の中でも比較的、自分が時間をコントロールできる時間帯である朝に取り組むのがいいと思います。
まとめ
今回は、練習が続かない・・・そんなときに今すぐ見直すべき3つのポイントをついて紹介しました。
改めてまとめておくと
・望みを明確にする
・練習は反応と刺激の結合
・疲れたら休む
練習が長続きしない、練習したいけど楽しくないというような、練習についての悩みをお持ちの方は、この3つのポイントを見直して見ることをオススメします。
この3つのポイントを大切にして取り組んでいると、練習が楽しくなってきます。そうすれば、あとは何もしなくても続いていくし、成長していきますよ。
それでは、アナタの学びが楽しくなることを願ってます!!
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