声優の養成所に通う20代後半の男性、おさむさん(仮名)がレッスンに来てくださったときのことです。
おさむさんは、こんな悩みや望みを持っていました。
・毎日5時間も練習しても上手くならない
・同じクラスで学ぶ人と比較してしまう
・レッスンに行くとどんどんやることが増えてしまう
おさむさん
毎日5時間も練習しているのに、全然上手にならないんです・・・。しかも同じクラスの若い子はどんどん上達しているのに・・・私はスタートするのが遅かったから、若い子たちと比べると上達が遅いのも分かってます。でもここまで伸びないのなら私は才能がないんでしょうか?
トクガワ
毎日5時間も練習しているなんて凄いですね!具体的には、どんなことをしているんですか?
おさむさん
まず準備体操をしてから発声練習をします。それから腹式呼吸の練習をして、長音の練習をして外郎売りをやります。その後に滑舌の練習をして、新聞で初見読みをして・・・そこまでやってからレッスンで使っている原稿や台本で練習します
これを聞いて、私は、あまりの真面目さに心の底から感服しました。
トクガワ
正直、スゴいと思います。でも、毎日そこまでする必要はないと思いますよ?
おさむさん
でも事務所の先生は"練習時間は長ければ長いほどいい"って言ってましたし、レッスンで言われたことを練習に取り入れて行くと、毎日やることが増えていくんです
しかし、彼の真面目さに敬服する一方で、事務所の先生の適当なアドバイスに怒りがこみ上げてきました。
トクガワ
事務所の先生は"練習時間は長ければ長いほどいい"と言ってたんですか?
おさむさん
はい。"練習時間に比例してうまくなる"って言ってました。"実際、売れている人は毎日たくさん練習していた"とも言ってました。だから練習をたくさんすればするほどうまくなれると思っています。
トクガワ
"実際、売れている人は毎日たくさん練習していた"って言っていたのは、先生はそれを本当に見たんですかね?
おさむさん
・・・分からないです
トクガワ
分からないなら聞き流しておきましょう。ついでに"練習時間に比例してうまくなる"というのも一緒に流してください。練習なんて15分でOKです。
おさむさん
えっ!?短すぎじゃありませんか?
トクガワ
そうですね。短いと思います。でもその15分の質が高ければ、5時間分の練習よりも断然効果があります。
おさむさん
そんな・・・事務所の先生は"練習時間に比例してうまくなる"って言ってましたよ?
トクガワ
だから聞き流してくださいて言ったじゃないですか。
おさむさん
でも信じられないです。毎日15分でいいなんて。
トクガワ
15分がいいというわけじゃありませんよ。質が問題なんです。質が低い練習なら、5時間やろうが10時間やろうが効果はありません。でも質が高い練習なら15分でも効果はあるし、1時間ならもっと効果があります。そもそも毎日5時間確保するなんて大変じゃないですか?
おさむさん
はい。アルバイトと練習、それに事務所のレッスンでほぼ1日が終わってしまいます。他の若い子たちは仲良く遊んだりしているけど、私はみんなみたいに上手くならないので人一倍練習しなきゃいけないと思って、誘いを断ってます。
トクガワ
ホントはみんなと遊びたいんですね。
おさむさん
はい。できることなら。
トクガワ
その子たちは、おさむさんより上手くなるのが早いようですけど、おさむさんよりたくさん練習していると思いますか?おさむさんが5時間練習してるなら、10時間とか、練習してると思います?
おさむさん
・・・いや、思えないです。
トクガワ
ですよね。きっとおさむさんより練習時間は短いはずです。おさむさんでも彼らがどんどん上手くなるので、自分には才能がないのかなと・・・
トクガワ
これで1つ明らかになったじゃないですか。事務所の先生が言っている"練習時間に比例してうまくなる"っていうのがウソだって。
おさむさん
そうかも知れませんけど、先生がウソを教えるはずはないと思います。
トクガワ
そうですね。私もそう思います。
おさむさん
だったら、先生の言っていることが正しいはずです。
トクガワ
はい。その通りです。先生は「自分は正しいことを言っている」と信じていてる。そしておさむさんも「先生が言っていることは正しい」と信じている。でも実際はそうじゃないですよね?
おさむさん
・・・
トクガワ
おさむさんより練習時間が短い子たちのほうが上手くなっている。だから"練習時間に比例してうまくなる"は成立しないと私は考えます。
おさむさん
だったら先生はなぜそんなことを言ったのでしょうか?
トクガワ
先生は、"練習時間に比例してうまくなる"と信じているからです。もしくは、練習のやり方を教えられる術を持っていないからでしょう。
おさむさん
「練習のやり方」ですか?
トクガワ
おさむさんは「練習のやり方」を教わったことはありますか?
おさむさん
発声練習や滑舌の練習を先生から教わっていますけど・・・
トクガワ
うーん、それは「練習のやり方」ではないですね。それは「練習する内容」、つまりWhatですね。「練習のやり方」とは「どうやるか?」つまりHowです。Howの部分を教えてくれる先生はいますか?
おさむさん
いや・・・教えてもらったことがないです。そもそも、練習のやり方という言葉自体はじめて聞きました。
トクガワ
そうですよね。「どうやるか?」の方が大事なのに、多くの人は「何をするか?」ばかり教えているんです。いや、それしか教えられないんです。
おさむさん
なぜですか?
トクガワ
答えは簡単です。その先生は「どうやるか?」を教わったことがないからです。教わったことがないから教えられなくて当然です。ここで15分の話に戻りますけどね、「どうやるか?」を大切にしている15分の練習と、「何をするか?」しか気にしていない5時間の練習なら、どっちの方が効果があると思いますか?
おさむさん
えっと・・・でもこれだけの時間差があるから5時間の練習の方が効果は高いと思います。
トクガワ
おや、そうでしょうか?実際、おさむさんより練習時間が短い子たちの方が上手くなっているのに???
おさむさん
・・・そうですね。でも、認めたくはないです。
トクガワ
それも良いかもしれません。では、毎日たった15分で確実に上手くなる練習と毎日5時間やってもあまり上手くならない練習があるなら、おさむさんはどっちの練習をしたいですか?
おさむさん
・・・毎日15分で上手くなる練習がしたいです。
トクガワ
そうですよね。よく言ってくれました。多くの人はこんな状況になっても誤解や思い込みを変えることができず、ずっと苦しみ続けます。今、おさむさんは思い込みを手放すことができたんです。
おさむさん
思い込みですか?
トクガワ
はい。おさむさんは練習時間が長ければ長いほどいいと思っていました。先生にそう教えられてきたからかも知れません。でも、たった今、短い時間でも上手になる方が良いと、新しい可能性を選ぶことができましたよね?
おさむさん
はい。
トクガワ
それが思い込みや誤解を捨てると言うことなんです。実際におさむさんのように「練習時間は長ければ長いほどいい」と思い込んでいる人は多いです。おさむさんの先生もそうです。でも、現実はそうではない。短い時間でも上手くなっている人は存在しているわけです。その現実から目を背けて、自分の思い込みにこだわり続けるから、苦しみ、もがき続けているんです。
おさむさん
私も実際にもがき続けていたんですね。
トクガワ
そうですね。だから私のレッスンに来てくれたんじゃないですか?
おさむさん
はい、その通りです。
トクガワ
せっかくなので、私が15分の練習でも上手くなれることを証明しましょう。おさむさんが最近取り組んでいて、上手くいかないと感じていることはありますか?
おさむさん
大きめの声を出す時、先生からは「体の力を抜け」と言われるんですがそれが上手くできないです。
トクガワ
わかりました。先生がそれをよく指摘するのはどんな時ですか?
おさむさん
レッスンのはじめで必ずやっている発声練習の時からずっと言われます・・・
トクガワ
ではいつも通りに発声をしてみてください。
おさむさん
あえいうえおあおかけきくけこかこ・・・
トクガワ
はい、ありがとうございます。いつもと比べてどうでしたか?
おさむさん
いつもと比べてって言われても・・・あまりよくわかりません。
トクガワ
では質問の仕方を変えますね。先生が見ているとしたら、どんな風に指摘すると思いますか?
おさむさん
「もっと肩や首の力をぬけ」と言われると思います。
トクガワ
では、今のおさむさんの肩や首の使い方はどんなことを意識していましたか?
おさむさん
力を抜こうとしていました。
トクガワ
それは具体的に何をして力を抜こうとしていましたか?
おさむさん
えっと・・・肩や首を動かさないようにしていたと思います。
トクガワ
そうですね。実はそれが私には肩や首に力を入れているように見えたんですけど、おさむさんにとってはどうでしょう?
おさむさん
どうって言われても・・・力は入れていませんでした。
トクガワ
そうですよね。でも肩や首を動かさないようにするためにはある程度の力を入れて固定させる必要があります。
おさむさん
えっ?そうなんですか?
トクガワ
はい。筋肉はカラダを動かすためのものなので、動かさないようにするには筋肉を固めなくてはなりません。そのためには力が必要です。そして発声も呼吸もカラダの動きですから筋肉を動かすための力が必要です。
おさむさん
でも先生には力を抜けって言われます。どうすればいいんでしょうか?
トクガワ
必要な分だけの力を使えばいいのです。試しに首とか肩の事は考えなくていいので、お腹の後ろから前にかけての筋肉が特に働くことを意識して、もう一度さっきと同じ練習をしてみてください。
おさむさん
お腹の後ろから前にかけてですね。わかりました。あえいうえおあおかけきくけこかこ・・・
トクガワ
はい、ありがとうございます。さっきと比べて違いましたか?
おさむさん
はい、たしかに違いました。
トクガワ
どんな違いでしたか?
おさむさん
えっと、今まで体験したことないくらい大きな声が出せたという自覚があって、しかもさっきよりも楽に声を出すことができました
トクガワ
いいですね。肩や首についてはどうでしたか?
おさむさん
えっと、考えなくて良いと言われたので何も考えてませんでした。
トクガワ
それでいいですよ。私には肩や首に必要な動きがおきているように見えたのでとても良い変化だったと思います。
おさむさん
ということは、今まで力を抜こうとしていたのが逆効果だったんですね。
トクガワ
そうですね。「力を抜こう」というよく分からないことをしようとしていたので、それが逆に力を入れて固めることを引き起こしていたんじゃないかと思います。さて、時計を見てみましょうか。
おさむさん
時計ですか?
トクガワ
はい。おさむさんとお話していて、ここまででどのくらい経ったかなと。
おさむさん
あ!だいたい15分くらいです。
トクガワ
ピッタリですね。しかもおさむさんが練習したのは何回ですか?
おさむさん
「あえいうえおあおかけきくけこかこ」を2回しかやっていません。
トクガワ
ですよね。質が高い練習というのはこういうことなんです。
おさむさん
トクガワさんが15分で十分って仰った意味がわかりました。でもこんな練習はひとりでできるようになるものなんでしょうか?
トクガワ
もちろんできますよ。実際、私が特に何かしたわけじゃなくて、やったのはおさむさんじゃないですか。
おさむさん
でも今はトクガワさんが言ってくれたとおりにしただけで・・・
トクガワ
確かにそうかも知れません。でも実行したのはおさむさんご自身です。私がやったわけじゃないんです。
おさむさん
それはそうかも知れませんけど・・・
トクガワ
大丈夫です。おさむさん一人でもできるようになりますよ。私のレッスンはそのために必要なことを身につけていただくためのレッスンなので。では、これからの時間でそのための方法をお教えしていきますね。
おさむさん
はい!おねがいします!!
今回のレッスンについての解説はこちら
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