こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
レッスンやLINEでの相談をしていると色んな方のお話を伺う機会があります。もちろん声についての悩みや望みというものは皆さんそれぞれ違います。
でもね、そこには共通していることがあるのです。
思い込み、発声や呼吸についての誤解、無意識の習慣など、悩みがなかなか解決しなかったり、望んでいることがなかなか実現しない方にはこれらの共通点があるようなのです。
そこで今回は声を出すことについて、多くの方がやっている間違いや思い込み、誤解や無意識の習慣などを取り上げ、多くの人がやってしまっていてそのことに気づいていない自分で自分の声を邪魔していることを紹介します。
今回紹介することは、あなたにとってはごく当たり前のことかもしれません。もしくはこれまでに習ったことかもしれません。できなければ先生に怒られたことがあるかもしれません。
もしくは、やっていることに気づいていないかもしれません。
でも今回紹介することは、実はあなたが声を出すことを邪魔していることなのです。
もし発声やコミュニケーションに関係するあなたの悩みがなかなか解決しなかったり、望み通りに行かないことがあるなら、これらのどれかをやっているからです。
だから、その邪魔することをやめればいい。
今回からシリーズ【ゼッタイにやってはいけない発声法】と題して、これからいくつか挙げていきますので、ご自身のカラダの使い方と比べてみてください。
自分で自分の発声を邪魔していることを、あなたはいくつやっていますか?
そしていくつやめることができますか?
直前に大きく息を吸い込むことが発声の邪魔をしている
声を出す直前に大きく息を吸い込んでいる動作をしている方、多いですよね。人によっては「すぅーっ」とか息継ぎの音が聞こえる方もいますよね。
特に多くの息を必要とするシーンでこの「息を大きく吸い込む」という動作をする人が多いように見受けられます。
例えば、カラオケや合唱などで歌を歌うとき、多くの空気を取り込もうとする必要がありますよね。長いフレーズの直前などはできるだけカラダに息を蓄えておくために大きな息継ぎをすると思います。
もちろん息継ぎそのものが悪いわけではありません。息継ぎ、つまり呼吸はゼッタイに必要です。
でもその息継ぎをするときのカラダの使い方に問題があるとしたらどうでしょうか?
呼吸をするときのカラダの使い方があなたの声によくない影響を与えているとしたら???
多くの方は声を出す直前に大きく息を吸い込む習慣があります。
「息が持たない」とか「声が小さい」のような悩みがある方の多くは、声を出す直前に息を大きく吸い込んでいることが原因なんですよ。
大きく息を吸い込むのと何が起こるか知っていますか?
声を出す直前に息を大きく吸い込むと、実は発声を邪魔してしまいます。声を出すために息を大きく吸い込んでいるのに、それが結果的に邪魔してしまうなんて考えたことありますか?
あなたの発声についての悩みはこれが原因になっているかも知れないんです。
そもそも、あなたが声を出す直前に息を大きく吸い込んでいるのはどうしてでしょうか?
誰かからそう教わったのかも知れませんし、「カラダに空気をたくさん取り込んでおきたい」とい考えているからかもしれません。
いずれにしろ、私たちが何らかの行動する上では、意図というものが存在しています。この意図があるから私たちは行動を起こすのです。例えば、歩く、食べる、見るなど。私たちが毎日の生活において何気なくしている行動であっても、その行動を起こすにはそれなりの理由があるのです。その理由に当たるものが意図です。
「先生に言われたから」とか「たくさん空気を取り込んでおきたいから」という意図があって、声を出す直前に大きく息を吸い込んでいるんだと思います。
意図は私たちの行動に影響を与えます。時に、私たちのカラダをコントロールします。私たち人間のシステムは非常に優れていて、意図するだけであとはカラダが自動で動いてくれる、と表現してもいいかもしれません。
この自動システムがうまく機能しているとき、つまりあなたの意図通りに機能しているときは何ら問題はないのですが、時にあなたの意図に反する結果をもたらすこともあるのです。
今回のテーマである「声を出す前に大きく息を吸い込むこと」は、意図に沿った動きに違いないのですが、一部でそれに反する動きを引き起こしているのです。
声を出すときに大きく息を吸い込むのは「カラダにたくさんの空気を取り込んでおきたい」というような意図があるからですよね。実際に大きく息を吸い込んでいるのでうまく機能しているように感じるのですが、まさに声を出そうとする瞬間にその意図が予想外の動きを起こすことになるのです。
息を大きく吸い込んで、まさに声を出そうとする瞬間にそれは起こります。
わたしたちの呼吸は、吐くことと吸うことのくり返しです。吐いた後は吸うという動作が自然に起こります。吸うという動作の後には当然吐くという動作が待っているわけです。大きく息を吸い込んだそのあと、自然に吐く動きが起きるのですが、せっかく取り込んだ空気を少しでも外に漏れ出ないように、カラダが吐く動作を止めようとするのです。
私たちのカラダに備わっている呼吸のシステムと「カラダにたくさんの空気を取り込んでおきたい」という意図が衝突してしまい、その意図が勝ってしまうためにカラダは緊張して固くなってしまうのです。つまり、呼吸システムが息を吐こうとするのを止めるための動きが起こるのです。
この固さが生まれてしまうと、それを持ったまま声を出し始めてしまいます。それだけではなく、一度ににたくさんの空気が出て行くことを防ぐため、カラダはより固まる方向に働いてしまうのです。
せっかくカラダにたくさんの空気を取り込んだのに、それを大切にしようとしてカラダを固めてしまっているわけです。
そんなカラダの使い方では、「息が持たない」とか「声が小さい」という悩みは永遠に解決しないでしょうし、あなたの自由な声や表現は損なわれてしまうんです。
結局の所、あなたは自分で自分の発声を邪魔して、そのことに悩んでいるわけです。
解決策は、自分で自分を邪魔しないこと。でも・・・
カラダの使い方のせいで「息が持たない」とか「声が小さい」という悩みがあるのは、あなたが自分自身で声を出す邪魔をしているからです。
だからあなたの悩みを解決したり、あなたの望み通りの声を出すためには、あなたが自分で自分の邪魔をしないようにする必要があります。
では、カラダを固めないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
声を出すときに息を大きく吸い込まなければいいのでしょうか?
でもあなたがそうしてしまうには空気をたくさん取り込みたいという意図があるわけですよね?
その意図を実現するために、取り込んだ息が出ていかないようにするためにカラダを固めてしまっているわけですよね。
だから「カラダを固めない」ということをしている人が多いでしょう。
私のレッスンに来てくださる方の中にも、声を出すときに「カラダを固めないように意識しています」という方は多いのですが、カラダの使い方を見ているとその意識とは反してカラダを固めています。自分ではカラダを固めないように意識しているつもりでも、実際はカラダを固めているんですね。
しかも、カラダを固めていることに自分で気づいていないんです。
もちろんそれには理由があります。
例えば、あなたが以前にレッスンを受けた先生に「力を抜いて」とか「力まないで」といったアドバイスをされたことはありませんか?
レッスンの現場ではよくあるアドバイスですが、実はこのアドバイスがカラダを固めるきっかけを作っているのです。
とくに「力まないで」というような否定形をともなうアドバイスは、多くの場合は正常に機能することはなく、逆の方向に働きます。「力まないで」と言われると余計に力んでしまうのです。
そうなってしまうのは、人間の脳がそうさせているようです。
人間の脳は否定形を理解できないようにできているそうなんです。その上、否定を伴う表現の指示やアドバイスがあった場合、その現象への意識が強くなり、さらに強化してしまうようなんです。
だから「力まないで」と言われれば余計に力む、「緊張しないで」と言われれば余計に緊張する。「カラダを固めない」と意識すれば余計にカラダを固め、「自分で邪魔をしない」と意識すれば余計に邪魔をしてしまうんです。
ということは、「カラダを固めない」とか「自分で邪魔をしない」とどれだけ意識しても、全く効果がないわけですね。
一体どうすれば、あなたな自分で自分の発声を邪魔することなく、自由に思い通りに声を出せるようになるのでしょうか?
「息が持たない」とか「声が小さい」という悩みを解決できるのでしょうか?
私は以前、まさにこのテーマでレッスンをしたことがあります。その時のエピソードが役に立つと思いますので紹介しておきますね。
そもそも息を大きく吸い込む必要はない
ある時、1人の女性が私のレッスンに来てくれました。趣味で歌を習っているアスカさん(仮名)は、二〇代前半の女性で、こんなことに悩んでいるとお話してくれました。
・先生からいつも歌声が小さいと言われる
・「声量を大きく」、「もっと声を出して」と言われるのでそれをやっている
・それでも「声が小さい」と言われる
レッスンを通じて、アスカさんはどんな体験をしたのでしょうか?
後日、アスカさんからLINEでメッセージをいただきました。
プレゼンは大成功。しかも上司からは誉められた上、「見違えるくらい声出てたけど、何やったの?」と驚かれたそうです。
こうしてアスカさんがご自身で活用できるようになって、私はとても嬉しいです。
使い方を変えれば、声量は大きくなる
では、アスカさんとのレッスンを振り返って見ましょう。
アスカさんが悩んでいたことは「もっと声量を大きく」や「もっと声出して」と歌の先生に言われていました。でも、どれだけ声量を大きくしても、声を出しても先生には「声が小さい」と言われていました。
その時、アスカさんが声量を大きくするためにやっていたことは声を出す前に息をたくさん吸うこと。私にもそれはアスカさんの動きを通じてはっきりと見てとることができました。
それと同時に、実はあることが邪魔しているのも見えていました。
アスカさんが息を大きく吸い込む時に、カラダをほんの少しだけのけぞるような動きが起こっていたのです。レッスン中に私が「それ」と言って明かさなかったことの正体がこれです。
この動きがアスカさんのカラダ全体を後ろ側に引っ張り、結果として発声の邪魔をしてしまっていました。だから、私はこれが原因でアスカさんの声量が期待通りに出ていないのではないか?と考えました。
そこで一般的なボイストレーナーなら「大きく吸い込むことをやめて」というようなアドバイスを・・・しないですね。そもそも一般的なボイストレーナーには大きく息を吸い込むことが発声の邪魔をしているなんて知らないですから。しかも大きく息を吸い込んだときに、ほんの少しだけのけぞるような動きが起きているなんて気づかないですからね。
つまり、通常のボイトレでは、先生もどうしていいかわからないのです。だからアスカさんがどれだけがんばっても先生は「もっと出して」とか「もっと大きく」しか言うことができないのです。そしてアスカさんは一人で悩んでいたわけです。
さて、私がアスカさんにアドバイスしたことを覚えていますか?
私はアスカさんに「大きく息を吸い込むことをやめて」とは言いませんでした。発声の邪魔になっていることを起こさないために、直接的なアプローチはしなかったわけです。
なぜなら「大きく息を吸い込むことをやめて」とアドバイスをしてしまうと、アスカさんはもっと大きく息を吸い込んでしまうからです。これについては他の方とのレッスンエピソードでも紹介した、脳は否定形を理解できない、と言うことを思い出してもらえばすぐにお分かりですよね。
だから、否定形を伴った直接的なアプローチはせずに、間接的に発声の邪魔が起こらないような提案をしたわけです。
それが「息を吐くことをたくさんやる」ということです。
アスカさんが歌っている時のカラダの使い方を見ていると、息を吸うことについてはたくさんやっているのに、息を吐くことについてはほとんどやっていないように見えたのです。
だからそれを確かめるためにアスカさんにこんな質問をしました。
歌うこと、つまり声を出すと言うことだけで考えてみると、必要なのは「息を吸うこと」と「息を吐くこと」のどちらでしょうか?
そうするとアスカさんはこう答えてくれました。
「息を吐くこと」だと思います。
でも、実際に歌っている時、アスカさんは息を吐くことをほとんどやっていないように見えたのです。
だからもう一度質問しました。
そうですね。では、アスカさんが歌うとき、「息を吐くこと」についてどのくらい考えたり意識していましたか?
その質問へのアスカさんの答えを覚えていますか?
全く考えていなかったです。それに息をたくさん吸うことばかり考えていました。
吐くことよりも、吸うことを意識していたんですね。
だから私は「息を吐くことをたくさんやる」を意識してもう一度歌ってもらったわけです。
そうするとアスカさんの声量は大きく変化しました。アスカさんもその違いに気づいていました。
こんな風に、カラダの使い方を変えるだけで簡単に声は変わるのです。
なぜなら、あなたはもちろん、ほとんどの人は自分の発声を邪魔するようなことをしながら声を出していますからね。
その邪魔を取り除けば、声が変わるのは当然です。
アスカさんは、私がお渡ししたアイディアを活用してくれていたので、後日のプレゼンでも成果を収めたわけです。
もし、あなたがアスカさんと同じ事をやってみても効果が出ないのならば、それはまだあなたが自分で自分の邪魔をしているに違いありません。
まとめ
それでは今回のまとめです。
ゼッタイにやってはいけない発声法 その1
「大きく息を吸い込む」
・大きく息を吸い込むと、カラダをのけぞらせる動きを誘発する
・その動きは発声の邪魔をする
・発声で大切なのは息を吸うことではない。息を吐くこと
今回のアスカさんとのレッスンエピソードはきっとあなたの役に立つはずです。
LINEを通じて質問してくださる方の9割がアスカさんと同じような考えをお持ちです。
つまり、息をたくさん吸うことが大切だと考えているんです。
でも本当はそうではありません。だって、発声は息を吐く時に起きていることですからね。
息を吐かなければ声は出ないのです。そして息を吐くと、吐いた分だけ自然に吸うことができるようになっています。それは呼吸中枢が勝手にやってくれます。できれば呼吸中枢のお話もしたい所ですが、話せば長くなってしまうのでセミナーやワークショップなどもっと深く学びたい人が集まる場でお話しようと思います。
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シリーズ「ゼッタイにやってはいけない発声法」その2はこちら