これもアドバイスやダメ出しでよく耳にするフレーズです。

「口の開きが足りない!」とか「指を縦にして三本分くらい開く!」とか。

そのたびにこれでもかと大きく縦に口を開くわけですが・・・

すぐに顎が疲れませんか?
もしくは首や胸などが疲れたり、痛くなったりしませんか?

それは、無理なカラダの使い方をしている証拠。
短時間で蓄積する疲労や痛みは身体に不要な負担がかかっている証拠です。

以前、滑舌についてのお話をしたときがありました。
滑舌をよくしたいからと舌だけに注目すると、舌の動きを変えるために、別の部位の動きが変わり、その部位に新たな負担がかかるので、舌だけに注目するのではなく、カラダ全体で考えましょう、ということでした。

「口を開く」ということも一緒。
口を開く動作にも様々な部位が関連しています。
すぐに顎が疲れる人は、顎の筋肉で無理に口を開こうとしているのでしょう。
首や胸が痛くなる人は、顎から首や胸にかけての筋肉を酷使して口を開こうとしているのでしょう。

確かにこれらの筋肉を使うと口を大きく開くことはできます。
ですが、「口を開く」ということについてもっと繊細に観察してみましょう。

さて、そもそも口はどこでしょう?
医学では口腔といいます。
上下の唇の間にある開口部です。

この開口部を広げる(口を開く)時、あなたはどの部位を動かしていますか?
またはどの骨、または筋肉を動かしますか?

恐らく、「もっと口を開いて」と言われたときは、とにかく開口部を大きくすることだけに意識が向かっているので、どの骨や筋肉を動かしているかは全く意識していないと思います。
それ故、本来は使わなくてもいい筋肉を使って口を大きく開いているのです。
不要な負担がかかった結果、すぐに疲労したり痛みがでたりするのです。

それでは、本来使うべき骨や筋肉はどこなのか?詳しく見ていきましょう。

まず、骨から。
人体模型や解剖図で見ていただくとわかりやすいのですが、口は上顎骨と下顎骨が離れたときにできる隙間に位置しています。
二つの顎骨はだいたい耳の穴の前辺りの関節で繋がっています。
口の開閉と二つの顎骨の関係を見てみましょう。

口を閉じている→上顎骨と下顎顎がくっついている
口を開いている→上顎骨と下顎骨が離れている

こんな状態です。

さて、上顎骨と下顎骨が、くっついている状態から離れる状態に向かうためには、どの部分を動かすといいでしょうか?

1.上顎骨を上に動かしますか?
2.それとも下顎骨を下に動かしますか?
3.または両方同時?

試しに1.のように上顎骨を上に動かしてみましょう。
確かに口は開きます。
でも、上顎骨を上に動かすには、その上にある頭蓋骨を上に上げねばなりません。約五キログラム近くある重たい頭を持ち上げなければなりませんから、首(頸椎)に負担がかかります。
しかも頭蓋骨を動かすことで、目の位置が変わり、視界が動いてしまいます。

口を開くために、なんだか大変なことがされています。
これはあまり有効ではありませんね。

同じく3.も上顎骨を上に動かすという大変なことに加えて下顎骨を下に動かすわけですから、これも有効ではなさそうです。

残った2.を試してみましょう。
下顎骨を下に動かすには、まず動きの支点となる部分を知りましょう。
下顎骨は耳の下辺りの関節で繋がっています。ですから、下顎骨を動かす時はここからです。
「下顎骨はここから動く」ということを意識して、口を開いてみましょう。

頭蓋骨や上顎骨は動かす必要はありません。
何度か繰り返していると、あることに気づきませんか?

実は下顎骨はまっすぐ下に動くわけではないのです。
このことに気づきましたか?
下顎骨を下に動かすとき、下顎の先端の軌跡を知覚してみてください。
真下ではなく、少し弧を描くようにして後方下部に動いています。

これまで、口を大きく開いてと言われたときの下顎の軌跡はどうでしたか?
ほぼ真下に動かしていませんでしたか?

本来は後方下部に動くはずの下顎骨を、ほぼ真下に動かしていたわけですから、下顎骨を真下に動かすために、本来は使わなくてもいい筋肉や骨を使っていたのです。
いわば、身体を過剰に使っていたわけです。
疲れや痛みは、それを知らせるためのシグナルだったのです。

口を開くには下顎骨を後方下部に向かって動かすだけ。
これでいいんです。

次回は、この動きの精度をさらに上げるために、筋肉も観察してみたいと思います。

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