前回は【喉を開くとか無理っ!!】っていうお話でしたw
そんなテーマで「喉を開く」ということが何を意味するのかを考えてみました。
簡単におさらいしておくと・・・
喉を開くなんて無理!無茶!無駄!
ということです(笑)
詳しく知りたい方は前回の記事を読んでみてくださいね。
喉頭懸垂機構の随意筋たちに神経支配を行き渡らせ意識的にコントロールできるようになれば、喉を開くことは可能でしょうが、あまり役に立ちません。
喉を開く練習をするなら、その情熱と時間を他のことに費やした方がよっぽど建設的です。
なぜかというと、前回の最後に紹介したように、喉を開くことができたとしても、新たな問題が生じるからです。
それはこんな問題です。
・筋肉を引っ張るということは力を入れることになる
・そもそも通常のままでも声を出すことはできるのに、なぜ広げる必要があるのか?
今回は、喉を開くことで生まれる問題を考察してみましょう。
「力を抜いて喉を開く」という矛盾
訓練の末に、喉頭懸垂機構に神経支配が行き届き、意図的に喉頭を広げることができるようになったとしましょう。
甲状舌骨筋や茎状咽頭筋を引っ張る(緊張させる)ことで喉頭の直径を広げるわけです。
そうすると何が起きるでしょうか?
人間の身体には弾性がありますから、当然、元に戻ろうという力が働きます。
広げた喉頭が元に戻る動きです。
輪ゴムをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
輪ゴムは広げると元の形に戻ろうとしますよね。
さて、喉頭を広げると元に戻ろうとするわけなのですが、喉を開くという意志が働くと、元に戻ろうとする力に抵抗するようにさらに筋肉に負荷をかけます。
より引っ張ることで、喉の開きを維持しようとするわけです。
つまり、喉を開こうとすると筋肉の緊張が生じてしまうのです。
よく「喉の力を抜いて、喉を開きなさい」という指導をされる方もおられますが、カラダで実際に起きていることを観察してみると、矛盾したアドバイスですよね。
まあ、私もかつてこんな教えを受けたことがあって、さんざん混乱しましたが…(笑)
具体的に何をすべきか分からない私を見かねて、しまいには手で甲状軟骨あたりを掴まれて下に引っ張られたりもしました。
あ…、舌骨付近でも同じことされたわ…( -_-)
今思うとなんて恐ろしいことをされたんだ!
部分が全体に影響を与える
弾性のことをもう少し詳しくお話ししますね。
人間の体はテンセグリティ構造といわれており、全体が常にバランスをとり続けています。
テンセグリティとは、テンション(張力)とインテグリティ(統合)の造語です。
ある部分に負荷をかけたり、張力を強めたりすると、それ以外の部分にも作用して、全体としてバランスを保とうとします。
喉を開くことについて、テンセグリティの考え方を適用してみるとどんなことに気づくでしょうか?
先ほどのように、喉頭周辺の筋肉を引っ張ることで、胴体や腕、足にまで作用し、カラダ全体でバランスを保とうとします。
例えば、ただ腕を動かすだけでカラダ全体に変化が起きています。
ですが、本当に微細な変化なので、脳はそれを無視しています。
いちいちそんな情報を近くしていたら、日常生活を送るだけで疲弊してしまいますから。
脳が遮断している微細な変化も、実は簡単なワークをすることで感じることができます。
興味がある方は遠慮なくコメントやメールをくださいね(^_^)
話を戻しますと、
つまり、喉頭周辺の筋肉を引っ張ることで何が起きるかというと、本人が知覚できないレベルでごく繊細に全身のトーン(張り)が変わるわけです。
多くの場合、それは声に望ましくない影響を与えます。
ある部分で負荷をかけられたことで、そのほかの部分もわずかながら変化が起きます。
ある部位の筋肉が働いて引っ張ることで、その他の部位もほんの少し引っ張られるのです。
すると、それに対抗する力が生じます。
喉を開くことで、腕や足の筋肉もほんのわずかに負荷をかけることになります。
全身に負荷が生じると、何が起きると思いますか?
声の響きが失わなれてしまうのです。
全身に負荷がかかった状態は、トライアングルを直接手で持つようなもの。
筋肉や骨が共鳴することで生まれるであろう響きが失われてしまうのです。
今回は喉を開くことから全体に起きる影響をお話ししていますが、例えば呼吸するときに肩を動かないようにしたりすることも同じことです。
このように、喉頭というある部分だけを何とかしようとすると、他の部分にも影響を与え、それが望ましくない結果につながってしまうのです。
ちなみに、腹式呼吸も喉を開くことと同じて役に立たないと思います。
腹式呼吸についてより詳しく知りたい方は、【腹式呼吸の練習で気をつけたい3つのポイント】を読んでみてください。
なぜ喉を開く必要があるのか?
多くの方が「喉を開く」ことを勧めるのですが、私は、今のままでも声がでているのになぜ喉を開く必要があるのかに疑問を感じています。
仮に、ある方の通常時の喉頭の広さと発声時のの喉頭の広さを比較して、発声時に狭めてしまうのであれば、有効かもしれません。
ですが、それを実際に判断することはできないでしょう?
なのに、なぜこんなアドバイスが多く広まっているのでしょうか???
おそらくですが、ここには声帯もありますから喉頭に何らかの変化を与えるとそれがダイレクトに声に現れるからだと思います。
実際に良くなるかどうかは別として、すぐに変化が現れるから、教える側にも教わる側にもわかりやすいからでしょう。
しかし「喉を開く」というアドバイスは全く異なる緊張を生むので、あまり役に立たないと思いませんか?
そして、そんな使い方を続けていると、何が起きると思いますか?
発声時に無意識に喉頭を狭める力を働かせている人が、意識的に反対側の力を働かせるわけです。
それぞれの拮抗する筋肉が同時に機能するとどんなことが起きるでしょうか。
細い紙を両端から同時に引っ張るようなことと同じ現象が、声帯に起きているのです。
同時に引っ張る力が働くことで声帯の張りも変わりますから、声が変わるのは当然です。
しかし、これを繰り返しすとこで、発声時に声帯を引っ張る習慣をつけてしまうと・・・?
その習慣でずっとずっと遣い続けると・・・?
先ほどの紙の例だと、長い年月にわたって力をかけ続けると、紙はちぎれますよね?
では、喉を開き続けると声帯はどうなるでしょうか・・・・?
何かを改善しようとして、その部分だけにしか注目しないアプローチが良くない影響を与える一つの例ですね。
この類のアドバイスは他にもたくさんあると思います。
自分のカラダで起きていることを知る
声の仕事に携わる方々をはじめ、人前で話す機会がある方や周囲の方とコミュニケーションを上手くとりたいと思う方など、自分の声を良くしたいと思っている方は多いでしょう。
同じ問題を抱える方がいたとしても、それぞれのカラダで起きていることは異なります。
ある方は喉頭を狭めているかもしれませんし、ある方は咽頭を押しつぶしているかもしれません。
またある方は、鎖骨の押し下げ、あるいは肩甲骨を引き寄せているからかもしれません。
全ての方に「喉を開く」というアプローチが有効なわけではないのです。
というか、「喉を開く」なんて全く役に立たないというのは、ここまでお読みくださったあなたなら理解していただけますよね?
それぞれ一人一人のカラダで起きていることを正確に把握することが、教える側と教わる側それぞれにとって何よりも大切なことだと思います。
今回紹介した記事はこちら
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