集中することって大切なことですよね。
勉強や仕事に取り組むときに集中できると物事もはかどります。

一つのことに自分をそそぎ込むことが集中すること。

私は「集中」をそのように考えていました。

ところが、アレクサンダー・テクニークを教えるヴィヴィアン・マッキーさんが言うには、
集中にはその反面もあると。

それは「周りのものを排除する行為」だということ。

確かにその通り。
一つのことに打ち込みたいので、そのほかのものや邪魔になりそうなものを、目のつかない場所に移動したり、イヤホンや耳栓をしたり、周りをシャットアウトすることが多いです。

この考え方を、自分のカラダの使い方に置き換えてみると、新たな発見がありました。

特定の部位に集中するあまり、それ以外の部分は全く無関心になると言うこと。

例えば、腹式呼吸にフォーカスする事で、肋骨の動きに無関心になります。
今どんな声が出ているかなと発声を気にすると、呼吸がおろそかになる…
原稿の読み方にフォーカスすると、聞き手のことを忘れてしまう…

カラダを使う上で、特定の物事や部位だけにフォーカスする事はいい結果を生みません。
その特定の部位を稼働させるためには、他の部位であったりココロが動いていることに気がついておく方が、
「動いてもいい」というディレクションを自分自身に送ることにもつながり、結果もより良い方に向かいます。

お芝居のワンシーンで考えてみるとよく分かります。
自分のセリフや立ち回りに集中する役者と、常に相手役のことに注意を払っている演じている役者では、同じシーンを演じても空気感は全く異なります。
もちろん後者の方が観客も引き込まれます。

役者が自分のことに集中している人物を演じるのと、
役者が自分のセリフや立ち回りに集中しているのは全く別のこと。

集中は周囲を排除しようとすること。
シーンにおける登場人物が自分のことに集中することと、
その登場人物を演じる役者が役者自身のことに集中するのは全く異なるわけです。

では、注意とはどういうことか?というと、
自分の周りのこと全てに意識を向けるということです。
自分が今置かれている状況を理解していることでもあります。

私は何者か?
ここはどこか?
今は何月何日、何時何分か?
私はここに来るまで何をしていたのか?
私はこれから何をするのか?
何のためにそれをするのか?

本番中のパフォーマンスを向上させる方法」でもやりましたが、
自分がいる環境や状況をクリアに認識するだけで、パフォーマンスは確実に変わります。

環境や状況をクリアにすることは、自分の存在に「いいね」と言えることであり、
自分のことを信頼すること。
(自己受容や自己肯定とは異なります)

信頼は、行動における重要なエネルギーです。
信頼がなければ不安でたまりませんし、不安を抱えながらのパフォーマンスでは、良くない影響がでてしまいます。

先のお芝居のシーンの例でいうと、
常に相手役のことに注意を払っている演じている役者が観客を魅了するのも頷けます。

声優やナレーターにとっては収録中に観客がいるわけではありません。
そのせいか、台本や原稿に集中しがち。
でも実際には映像もあるし、ブースの外にはスタッフの皆さんがいます。
そのことをクリアにするだけでも効果はありますよ。

さらにリーディングエッジを応用して、
マイクを通じて、その先にいるミキサーさんやオンエア時の視聴者をリーディングエッジにすることができれば
よりパフォーマンスの質が上がりますよ。

そういえば、集中していることがよくわかる人を、電車の中で見かけました。

電車の中で本を読んでいる人だったのですが、
電車が混雑してくると、自分の読書スペースを確保するために周りの人を押し退けていました。

みなさんは、原稿や台本を読みながら、周囲の人を押し退けようとするパフォーマンスをしていませんか?

 

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