声優やナレーターといった声のパフォーマーにとって「発声」は命です。
自身の声を使ってパフォーマンスするわけですから、声がでなければパフォーマンスができません。
では、声のパフォーマーの皆さん、声はどのようにして作られているのでしょうか?
肺の空気が押し出されるとき、声帯が震えて音が発生します。
この音が構音器官を経て声となって身体の外に出て行くわけです。
では声帯で発声した音はどういう過程をたどるか、順にみていきましょう。
肺から押し出された空気が声帯を振動させ、音ができます。
音はそのまま気道を通ります。
ところで、気道は身体のどのあたりにあるのでしょうか?
特に、首でいうと前側でしょうか?
真ん中側でしょうか?
後側でしょうか?
首には大まかにいうと、頸椎、気道、食道の三つの大切なものが通っています。
さてさて、皆さん、
この三つが、喉の前側からどの順番で通っているか知っていますか?
驚くべきことに、間違って認識している人が多いのです!!!
答え合わせしてみましょうか。
まず、前側にあるのは気道です。
喉の前側に触れると甲状軟骨があります。(いわゆる喉仏です)
そのすぐ内側に気道が通っています。
気道よりも奥、後側に行くと食道が通っています。
気道と食道は、上の方に行くと喉頭あたりで繋がっています。
そして食道の後側にあるのが頸椎です。
頸椎は脊椎の一部、背骨の一部です。
背骨というと一本のイメージがあるのですが、本当は約24本の骨から成り立っています。
(詳しくは、次回『「背骨」をアップデートする。』にて。)
ということは、肺から押し出された空気と声帯が震えることで生じた音は、首の前側、喉仏のすぐ裏を通って、口の奥にたどり着くわけです。
そして口の奥の空洞、そこから繋がっている鼻の奥の空洞に響きます(共鳴)
ギターやバイオリンには空洞がありますよね。
弦の振動で発声した音が、空洞で響いて音の大きさが増幅されています。
弦楽器は弦の振幅で音の高さが変わります。
人間が意志と意味を持って発する音である「声」は、高低以外にも音を変化させることができます。
その役目を担っているのが、口の中(口腔)です。
口腔の上側は口蓋(軟口蓋、硬口蓋)、下側は舌、前側は歯と唇。
これらが音を声に変えています。
音は押し出される空気の流れにのって咽頭をすぎると、口蓋にぶつかります。
そして口蓋に沿って前方に流れ、口を通過して体外に出るわけです。
よく「声を前に」というレクチャーもありますが、声は前にしかでません。
ですから、「前に声を届けよう」と結果をイメージするよりも「肺から息が上に押し出される」という過程を意識した方が、より声は前の方に届きます。
「私は滑舌が良くないから」という方は舌の動きに注目しがちです。
ですが、声は、このような過程を経て身体の外に出て行くわけですから、舌だけに注目してトレーニングを積んでも、そのほかの部分でバランスをとろうとします。舌の動きが変わるということは、舌がその動きをするために、どこかの部位での動きや力の掛かり方が変わっているわけです。
果たして、その変化にあなたは気づくことができるでしょうか?あなたのパフォーマンスにどんな影響を与えるでしょうか?
ですから、一つの部位だけに注目せずに、関係する全てのことを気にかけましょう。
滑舌が良くないのは、舌の動きが原因ではなく、顎の動きが原因だった、なんてこともありますから。
また改めて顎の動きも詳しく見ていこうと思います。