突然ですが、普通に直立してみましょう。
何のためか気になるでしょうが、
お時間のある方はぜひ次の通りにやってみてください。
直立する時間は
10秒でもいいですし、30秒でもいいです。
時間は重要ではありません。
直立している間は、時間のカウントにフォーカスを向けないように、
スマートフォンのカウントダウンタイマーなどを使ってみることをオススメします。
お好きな時間を設定して、タイマーが鳴ったら先に進みましょう。
それでは、仮に30秒間直立していたとして
話を先に進めます。
さて、直立していた30秒間を思い出して、次の質問に答えてください。
・何が見えていましたか?
・何が聞こえていましたか?
・匂いを感じましたか?
・何か肌に触れるものはありましたか?
どんな回答でも構いません。
30秒間の記憶をさかのぼって答えてみてください。
さて、いくつ答えられましたか?
ほとんど覚えてなかった方が多いのではないでしょうか。
覚えていなかったというより、気にとめていなかったと言う方が的確かもしれません。
直立していた間、視覚が機能していなかったわけではありませんよね。
周囲のものは見えてはいたんだけど、あんまり覚えていない。
これは人間として当然の働きなのです。
人間は五感を通じて様々な情報を手に入れます。
例えば視覚は目に映るもの全て。聴覚は耳に入る音全て。
他にも、嗅覚、味覚、触覚を通じて、常時たくさんの刺激や情報を受け取ります。
受け取った刺激や情報を全て処理し記憶しようとすると、脳は非常にたくさんのエネルギーが必要になり、すぐに疲弊してしまいます。
そのため脳は全てを処理しようとはせず、受け取ったもののうち、必要な刺激や情報だけを処理します。
そしてその選別は、無意識のうちに、脳が自動的に行っています。
先ほど30秒ほど直立していたときは、周りに見えるものや音などをあまり重要ではないと判断して、脳が処理せずに切り捨てたために、あまり覚えていなかったのです。
それでは、前置きが長くなってしまいましたが、
ここに本番中のパフォーマンスを向上させるヒントがあります。
それは「私の全てでここにいる」ということ。
「私の全てでここにいる」というのは、私が私の全てを司っている状態です。
何が見えているか、何が聞こえているか、風や日差しを感じていること、などを認識している状態です。
五感で感じていることに気づくことができる状態です。
もう一度直立してみましょう。
ポイントは頸椎を押し下げをやめること。
頭蓋骨が上から引っ張られているかのように、頭を高い位置に置くことを意識しましょう。
目線はまっすぐ前、焦点を絞らずに視界に入っている人や物、全てが見えているようにします。
特に覚えようとする必要はありません。見ようとする必要もありません。
見えた人や物に何らかの印象を持ったのなら、そのまま持っていてください。
視界は前方だけでなく斜め後方もあります。
後ろは見えませんが、何があるかは想像もしくは予想できるはず。
自分の後にも何があるか、誰がいるか思い出してみましょう。
呼吸のことも思い出しましょう。
横隔膜が上がると息は体外に出て行きます。横隔膜が下がると息は体内に入ってきます。
呼吸はできる限り、口から吐いて、鼻から吸うように意識しましょう。
吸うとき、匂いは感じますか?
耳を澄ませてみてください。
何が聞こえますか?
風の音、テレビの音、自動車の音、誰かの声などあなたの周囲で発生した音は
あなたの耳に届きます。
今度は、意識を肌に向かわせましょう。
腕には何が触れていますか?手は?
熱い、冷たい、風、湿気などはどうでしょう?
いろんな方向に意識を向けました。
これが「私の全てでここにいる」ことです。
私の全てを使って、ここに存在していることを私に認識させるのです。
(この手順を「全感覚スウィープ」とも言います。詳細は後日アップします。)
そうすることで、一般的に「視野が広い」という状態になることができます。
アンテナを張り巡らせた状態、ものごとに気づきやすい状態です。
ただし、意識は一つのところにとどまらず、いろんな場所に向かいます。
もちろんあなたが臨む場所に向けることができます。
何かに気づいたら、それをきっかけに他のことが起きます。
過去の記憶が蘇ってきたり、身体を動かしたい衝動が生まれたり、喜怒哀楽の感情が生まれたり。
そしてそれがまた別のことを誘発します。
このようにあなたが気づいたことを脳が処理している間にも時間は過ぎ、
また新しい情報を処理して…と、連鎖的に情報が処理されていくのです。
常に脳が回転している状態ですから、あっという間に疲れてしまうのです。
ですから、意識しなければ「私の全てでここにいる」状態にはならないのです。
ですが、たまには五感を働かせて、私の全てでいることをしてみてください。
「私の全てでここいる」ことができると、パーソナルスペースをコントロールしやすくなります。
シャボン玉のように大きさを自由に変えることができるようになります。
ということは、本番中に「私の全てでここにいる」ことができれば、
あなたのパフォーマンスの質を上げるのに十分な効果があると思いませんか?
この方法を使うと、いわゆる「ゾーン」に入りやすくなるのでは?と考えています。
次回、詳しく解説します。