こんにちは。
発声改善士のトクガワ です。
今回は、「美しい声になりたい人へ」と題して、声の美しさについて扱います。
フレデリック・フースラー著『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』には、こんな風にまとめられています。
声の「よさ」は合理的に判断することができる。声の「美しさ」は感情的に判断できるもので、架空のことでしかない。
では美しい声になりたい人にはどんなことが必要なのでしょうか?
今回は、美しい声になりたい人全ての方へお送りします。
声の美しさとは
フースラーによると、声の「美しさ」は感情的に判断できるだけで、「架空のことでしかなく、その使命は美的感覚を呼び起こすこと。」とされています。
美的感覚を呼び起こすこと、というところに秘密が隠されていそうですね。
声は私たちのカラダという楽器による全身運動の結果として生まれるものです。
カラダの使い方、その時に考えていることや気分や感情なども含まれて声が生まれます。
誰かと話すとき、人前で話す時など、声を出す多くの状況において、ほとんどの場合はそんな悠長に構えることってできませんよね?
声を出す瞬間に自分のカラダの使い方がどうとか、どんな気分か?どんな感情か?なんて、いちいち気にしてられませんよね。
声を出す機会は不意に訪れるし、待ってくれないですもんね。
しかしながら、聞いていて心地いいなと感じる声の持ち主もいるわけです。
その方はなぜそんな声が出せるのかというと、カラダの使い方やその時に考えていることが見事に協調して声が出ているのです。本人が意識しているかどうかはわかりませんが。
その人のカラダの使い方と考え方や感情が協調して声がつくられることで、その感情が相手に伝わり、聴く人の中に何らかの感覚を呼び起こしているのではないでしょうか。
必ずしも相手の中にも同じ感情を呼び起こすわけではないとは思いますが、何らかの感情を喚起できるはずです。それが美しい声というものに隠されている要素だと思うのです。
もし意識せずにできるのであれば申し分ないですが、そんな方はまれだと思います。もちろん私もそう。無意識のままに声を出してしまうことが多いので、できる限り意識できるように習慣づけをしています。
美しさは肉体的機構とそれに関係する空想能力によって作り出される。
聴覚の中の特別な感じやすさによって認知される。
引用:フレデリック・フースラー著『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ』
耳で起きること
自分自身の声について色々と考察を重ねるのもいいのですが、アナタが出した声が実際にどんな風にして相手に届いているのかを考えるだけでも声の雰囲気は随分変わります。
また、相手に届くイメージを具体的に持つことができれば、それもフースラーの言う空想能力を増幅させて、より独特の要素を持った「美しい声」になるのでは、と私は考えています。
というわけで、アナタが出した声がどんな風に相手の耳に届き、相手の耳の中ではどんなことが起きているのかを知っておくことをオススメします。
耳の穴の奥には鼓膜があるのはおそらくご存じだと思うのですが、耳の穴の中を見てみましょう。
引用:『プロメテウス解剖学 コア アトラス 第2版』
図37.4 外耳道
鼓膜周辺をクローズアップしてみます。
引用:『プロメテウス解剖学 コア アトラス 第2版』
臨床 聴覚におけ耳小骨連鎖
D 耳小骨連鎖による音波の伝導
私たちの声のような音波は、耳の中を通って、鼓膜を振動させます。
鼓膜の振動がその先にあるツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨に伝わります。
するとアブミ骨の先にある前庭窓に振動が伝わります。前庭窓の内側には液体(リンパ液)があり、それを経由して神経に届けられます。(神経を伝わって最終的には脳に到達します)
こんな風にして私たちは声を理解しているようです。
もう一つ知っておいて欲しいのは、鼓膜での振動が前庭窓に伝わるときには、22倍に増幅されているという事実。
液体中の音波は高い抵抗を受けるために、音波を増幅する機能が備わっているのです。鼓膜の先には高性能アンプがあるんですね。
アナタが声を出した後、それを受け取った相手の耳ではどんなことが起きているか、なんとなく知っていただけたと思います。
さて、これを知ったあなたの声は、どんな風に変化するでしょうか?
できれば相手の耳に心地よい振動を届けたいと思いませんか?
もしそう思わないのであれば、美しい声になるのは難しいと思うので諦めましょう(笑)
美しくない声
美しい声になりたいなら、その反対の存在についても知っておきましょう。そう。美しくない声についてもね。
どんな声が美しくないのか、といっても明確な基準があるわけではありませんし、個人の主観によるところが大きいです。
そう言ってしまうと、美しい声もそもそも主観なのですが・・・(笑)
だからアナタ自身のなかにどんな声が美しいのか、美しくないのかを判断できるような基準をもっていれば役に立つのではないでしょうか?
参考までに、私の考えを挙げておきますね。
私にとって、美しくない声というのはこんな声だと思っています。
・相手を従わせようとする声
・相手に押しつけようとする声
・力に任せた声
・鼓膜を突き刺すような声
などなど、他にも挙げればたくさんあるのですが、このくらいにしておきます。だって私の主観ですから。
私にとって美しい声でも、アナタにとっては美しくない声かもしれませんし、その逆もありうるかもしれませんからね。
とにかく、抽象的なものではなくて、より具体的なものをイメージできるといいです。
美しい声になるために必要なこと
では、今回のまとめです。
美しい声とは、それを聞く相手に何かを想起させるものであって、そのためにはアナタのカラダと考え方をどのように使って声を出すかが美しい声かどうかのキーになっていると言うことです。
私たちは残念なことに声の出し方について、義務教育等で教わる機会に恵まれていません。
声は一生を通じて使っていく道具でもあるのに、その使い方を教わる機会がないってとても残念なことですよね。
カラダの使い方しかり、電車に乗ると常々そう感じます。
だからこそ、声をどのように使うかを学ぶことは、アナタの周りにいる誰もが取り組んでいない、一生を通じて使う道具を磨くことだと思うのです。
アナタだけの声、アナタだけの魅力に磨きをかけたいと思ったからこそ、この声のトリセツを呼んでくれているのだと思います。
ぜひこれからもアナタだけの声を磨いてくださいね。
きっと素敵で楽しい人生になりますよ。